加藤典洋さんによる「日本会議について」


ニューヨークタイムスに9月12日に掲載された加藤典洋さんの「日本会議」についての記事の拙訳です。
日本会議とは、愛国主義を標榜する右翼団体です。
http://www.nipponkaigi.org/


最近その名をよく見聞きするようになってきましたが、
それもそのはず、第二次安倍内閣の閣僚19名のうち、15名がそのメンバーです。
地方議会にもたくさんいます。
群馬県議会で言えば、47人中、23人がメンバーです。約50%が右翼団体のメンバーであるという事実。
(先日あった、群馬の森という公園から朝鮮人追悼碑を撤去することを主張したのは日本会議メンバーの県議会議員です)
群馬県が例外的に多いのではありません。他にも似た自治体はたくさんあります。
それだけ日本会議が浸透しているということです。
僕はまだ詳しくこの団体について知りません。
まずこのことを認識し、どのような団体かを知ることから始めたいと思います。


どのような経緯で加藤さんがニューヨークタイムスにこの記事を書いたのかは知りませんが、
僕の推測では、加藤さんの危機感がその大きな要因になっていたのではないか、ということです。
加藤さんも記事中で触れていますが、日本会議がクローズアップされてきたのはここ最近です。
気づいた時には既に大勢力になっており、内閣に15人もの人間(78%!)がいたわけです。
正直「間に合わない!」と加藤さんは思われたのではないか。
だから、最短で効果が出る方法として、ニューヨークタイムスに寄稿することを選ばれたのではないか。
その裏返には、日本の新聞では間に合わないという認識と、
日本はアメリカからの反応、言葉でしか動かない、動けないという深い絶望があるように感じられます。
これは僕の推測なので、正しい解釈なのかは分かりませんが、
僕が考える最短で効果が出る方法は、アメリカへのアプローチです。
最短を目指す必要があるほど、日本会議の勢力が日に日に増しているということかもしれません。
最重要チェック項目の一つとして、日本会議を登録したいと思います。

日本のティーパーティ


安倍晋三首相は、2012年に第二次安倍内閣を組閣後初めて内閣改造を行った。女性の社会進出について進歩的であることをアピールし、5人の女性閣僚を任命した。それは、小泉純一郎元首相の内閣と同じ数字であり、日本の内閣制において最多の数字である。海外メディアは、安倍首相のジェスチャーであるそのことに感心しているように見受けられる。しかし、日本では、あるグループの勢力が増強されたことに関心を示す人たちがいる。そのグループとは、「日本会議」と呼ばれる最近までそれほど知られていなかった国粋団体であり、今回組閣された内閣の19人のうち15人がそのグループのメンバーなのである。


今年の始めに日米関係についてのレポートにおいて米国会は、安倍氏の主張を体現する組織の一つとして日本会議に言及した。その主張とは、日本は西欧帝国主義国家から解放したことで東南アジアから感謝されるべきであること、1946〜48年の東京裁判は違法であること、日本皇軍による1937年の南京大虐殺は誇張されている、もしくはでっちあげである、という内容である。このような主張は、日本の不快な極右勢力の世界では標準的なものである。当然日本会議もその中に含まれる。


日本会議のウェブサイトには、彼らが日本の‘美しい伝統的な国家像’の維持、保存を求めていることが書かれている。そして皇室を中心にして、成熟した軍隊を日本が持つことができることを意味するであろう内容の‘新世代のための自主憲法’を制定することを主張している。教育においては、‘自虐’史観と‘行き過ぎたジェンダーフリー教育’を変更することで学童に愛国主義と道徳を植えつけることを主張している。さらに彼らは女性が天皇になること ―過去には女性が天皇であったこともあるのだが― と、結婚後に女性が別姓をもつことにも反対している。


日本会議は今年の夏に注意を集めるようになった。東京新聞が、性差別者として指摘された二人の地方議員が日本会議に所属していたと報道した。そして朝日新聞も、日本会議に所属している各地の地方議員が、憲法から‘平和条項’を除去する草の根運動を扇動しようとしていた、と報道した。安倍内閣の改造を見て、日本の人々は一ヶ月半前まで聞いたことなかったグループが、日本の政策を体現していることを認識した。


日本会議は、約35,000人の有料会員がいる。(男尊女卑の価値感に従って、男性は年間10,000円で、女性は半分の年間5,000円である。)250以上の事務所が日本国内にある。朝日新聞によると、289人の国会議員が参加していて、そのほとんどが自民党(現在の衆参両議院の40%を占めている)の保守主義議員である。憲法改憲には衆参両議院で2/3以上の賛成が必要だが(さらに国民の1/2の賛成も必要である)、自民党や他の党の改憲派予備軍と日本会議に所属する議員をあわせれば、恐らく既に改憲に必要な数は既に存在しているだろう。そして、もちろん、日本会議安倍氏と極めて親密な関係にある。


日本会議の最近の報告書では、単に日本国内で最大の右翼団体と記述されることが多い。実際のところ、ティーパーティーと同族である。アメリカのティーパーティーのように、日本会議は未来に対しての保守的視点からみた不安が生み出した産物である。日本会議は1997年に表舞台に出てきた。自民党が単独で内閣を組閣する力を失い、連立政権を汲み出した2、3年後のことである。そして、中道政党である民主党が政権を獲得した2009年以後拡大していった。日本会議ティーパーティーの両方とも、自分たちを‘国民’の‘伝統的な’価値感を代表する‘草の根’運動として規定している。ティーパーティーのスローガンの一つは「アメリカを取り戻せ」であり、直近の選挙における自民党のそれもまた「日本を取り戻せ」であった。


しかし、安倍氏自民党日本会議は一体誰から日本を撮取り戻すと言っているのだろうか? オバマ大統領や左派アメリカ人への拒絶においてはっきりしないティーパーティーと違って、日本の保守主義者は、彼らが反対しているものを表現し、正確に言うつもりはない。


彼らの漠然性は、保守政治家である石原慎太郎が1991年に出版した本のタイトル『NOと言えない日本』を思い出させる。(石原は日本会議の幹部である)そこでは、石原は、日本はアメリカに立ち向かうべきだと主張した。後に彼は日本のそれに対する無力さを感じ、恥ずべき中国批判の議論へと方向転換した。


日本会議自民党は、中国もその権利を主張している尖閣列島に対する日本の主張を死守すること、第二次世界大戦における日本軍部の従軍慰安婦の強制性について否定することで、隣国に挑発的な態度を示している。


しかし、究極的にはこれらの立場は代用品でしかない。事の核心は、戦後日本はアメリカと平等的立場に一度として立ったことがないということをどんな政治的信念を持つ日本人でも共有しているということにある。


現在までに、日本のティーパーティーである日本会議は、他のどの愛国的右翼団体のようにも見える。しかし、その勢力は日に日に成長している。そして、彼らがいつ彼らの頭の中にある本心を言い始めるのかを断言することはできない。すなわち、「アメリカから日本を取り戻せ」という本心を。


http://www.nytimes.com/2014/09/13/opinion/tea-party-politics-in-japan.html?_r=0