人種差別批評で海外ジャーナリズムに遅れる日本メディア


先月、日本外国人特派員協会であった山谷氏の会見の報道について、
海外メディアと日本メディアの比較を取り上げた文章を拙訳したものになります。


人種差別報道についての考え方、右翼団体と政治家についてなど、
参考になる部分があります。
本文でもありますが、日本のメディアでは山谷氏と在特会、山谷氏と百人の会(山谷氏が一緒に写真を撮った増木重夫氏が設立したグループ。NHK経営委員の長谷川三千子氏が顧問。山谷氏も顧問)それぞれの関係など、日本のメディアではほとんど取り上げられることがありません。(東京新聞ではたびたび出てきますが)
重大と考えていないのか? 政権に恐れをなしているのか?
いずれにせよ問題です。
重大と考えられないなら、知性の欠如。
政権に恐れをなしているのなら、報道者の使命感の欠如。


ちなみに、山谷氏と百人の会の関係は露骨です。
山谷氏が国家公安委員長に就任した際の百人の会のメールマガジン東京新聞に掲載されていました。

「山谷えりこ姐が拉致担当大臣、国家公安委員長という重職にご就任された」
NPO法人教育再生・地方議員百人と市民の会」(事務局・大阪府吹田市)が最近、会員らに配信したメールマガジンの冒頭部分である。


http://blogs.yahoo.co.jp/surugamiho/13369400.html

さきほども書きましたが、この百人の会の代表が、山谷氏と一緒に写真を撮った、元在特会増木重夫氏です。
なにが「知りません」だ。
これだけの‘証拠’がありながら、どうしていまだに山谷氏はのうのうと大臣をやれているのだろうか? 甚だ疑問です。
それ自体のではありませんが、下記拙訳記事に海外メディアから日本メディアへの疑問もあります。

人種差別批評で海外ジャーナリズムに遅れる日本メディア



ヘイトスピーチや差別行動をする右翼団体に対する見解を表明するよう促された時、警察のトップに就任した山谷えり子氏は奇妙にも口が重くなった。


「私が個別の団体、組織についてコメントすることは適切ではない」と山谷国家公安委員長は、先月東京の日本外国人特派員協会で開かれた会見で語った。「ヘイトスピーチは極まて良くないことだ」とも語った。


彼女がヘイトスピーチを非難しなかったことは海外メディアを驚かせた。それにより、数々の海外メディアは山谷氏とヘイトスピーチ団体との関係性を報じた。しかし、日本の報道メディアからは同様の報道はなかった。


山谷氏は先の安倍内閣の改造で、法の執行において行政上の機関として最上の組織の責任者に就任した。


9月25日に開かれた日本外国人特派員協会の会見の前に、2009年に在特会幹部と一緒に撮った写真が露見された。(在特会=在特特権を許さない会。在日韓国人 に非寛容な市民団体)
彼らは‘在日特権’に反対しており、在日韓国人の方々が住む場所などで、ヘイトスピーチを行っている。


会見は北朝鮮による日本人拉致問題について開かれたものだったが、30分の質疑応答の時間のうちほとんどが在特会との関係についてのものだった。


アメリカのwebマガジン「Daily Beast」の記者で会見に出席していたジェイク・アデルステイン氏は、山谷氏が会見の中で一度も在特会を非難することがなかったことに面食らった、と話した。
アメリカだったら、在特会を非難しない彼女の反応はメイントピックになり、記者会見後に在特会との繋がりへの疑いはより深まったと報道するだろう、と彼は話した。


疑惑の写真について、山谷氏は、「私は多くの人と会うことがあり、彼が在特会と関係があったことは知らなかった」と話した。


彼女のコメントは、日本において政治家がスキャンダルに巻き込まれた時のありきたりな否定の言葉だった。「たくさんの人に写真を頼まれ、前もってそれらの人たちがどんな人なのかは分からない」と政治家はしばしば言う。
高市早苗総務大臣稲田朋美自民党政調会長も、2011年にナチスを信望する組織のトップと撮った写真について質問された時に、同じような回答をした。
日本のメディアは写真についての彼女たちのコメントを報道したが、その扱いは小さなものだった。
しかし、アメリカとヨーロッパでは、彼女たちを激しく批判した報道がなされた。


イギリスの日刊紙「The Independent」に寄稿しているデイヴィッド・マックネイル氏は、山谷氏と在特会の写真のみを根拠にした疑わしい関係性については懐疑的な印象を最初は持っていた。
しかし、記者会見に出席後、彼は考えを改めたと語った。なぜなら、山谷氏が在特会の考えを非難せず、ジャーナリストが促しているにも関わらず、在日韓国人の方々が‘在日特権’を享受していると攻撃する在特会の罪を否定しなかったためだ。
マックネイル氏には、山谷氏が在日特権の存在を認めているように感じられた。
「The Independent」は、山谷氏の記者会見でのコメントと高市氏、稲田氏の写真もあわせて、在特会と他の右翼団体のレポートを報道した。


イギリスの週刊誌「The Economist」は、9/27号の「日本のヘイトスピーチ」という記事の中で、「ヘイトスピーチ関連は、トップの影響があると思われる」と言及している。


マクネイル氏は、日本の報道機関は権力を批判することに慎重になっており、また安倍な首相の応援団になるものさえある、と言う。


ドイツ人ジャーナリストのシーフリード・ニテル氏は、日本のメディアは状況の深刻さを理解していないと言う。
ヨーロッパであったら、政治家が人種的少数派に対する差別行動をする組織の人間とテーブルを同じくするようなことは考えられない、と続けた。
さらに、言葉の暴力は、いつでも身体的暴力に転化することを警告することも忘れなかった。


北海道大学のヨーロッパの比較政治学を専門にする吉田徹准教授は、日本と海外の報道の違いは過去のことが関係していると語る。
第一次世界大戦後、最先端の政治システムだったワイマール共和国が、ついにはナチスを産み出し、組織的に特定の人種迫害をしたという反省の共通認識が西欧諸国にはあります。それにより、西欧メディアの反応は鋭いものとなった。」と彼は語り、さらに「日本は、民主主義の廃止という経験をしたことがないので、平等や人権について西欧と同じような認識を持っていない」と語った。


差別の問題を広範囲に調査したジャーナリストである安田浩一氏は、「多くの日本の報道機関は、人種差別的行動を限られたグループの人々のみに影響するものとして考えている。しかし、差別は差別されている人たちだけの問題ではない。私たちは、我々の社会が崩れかかっているから差別は起こるのだということを認識しなくてはならない」と語った。


The Asahi Shinbun 10/8
http://ajw.asahi.com/article/behind_news/politics/AJ201410080059