「大学脅迫事件と最近の安倍政権の動向との関わりについて」
英新聞「ガーディアン」の10/13付記事です。
お題は「大学脅迫事件と最近の安倍政権の動向との関わりについて」です。
朝日新聞の従軍慰安婦誤報に関する北星学園大学と帝塚山学院大への脅迫についての指摘がなされています。
また、それについて安倍内閣との関連性も書かれています。
興味深いのは、上智大学の中野晃一教授と法政大学の山口二郎教授の指摘です。
お二人とも同じようなことをおっしゃっていて、
「首相や内閣が在特会や過激な右翼団体に明確な非難、批判をしないために、無言の容認を得たかのように勢いづいている。」
という内容です。
また、そこから、
「安倍内閣というのはつくづく周囲の目を気にしない内閣だんだな」
と思わずにはいられません。
「自分らしさ」「自分らしく」「信念」なのでしょうか。
「周囲の目なんか気にして自分のやりたいことをしないなんて損だ!」
という、そこらへんのドラマや映画や漫画や小説などにありそうな気構えなのでしょうか。
こんな言説が溢れている世の中をみると、安倍内閣の支持率が一定の水準にあり続けていることの理由が分かるようです。
これも安倍内閣の「幼児性」の一つです。
「周囲の目を気にしない」ということ。
周囲はその目に映ったものとして、そのものを扱います。
「明らかに世界の潮流から外れる過激な右翼団体について、非難も批判もしない安倍内閣」
という見方をされた内閣として扱われます。
その扱わ方について、
「日本を不当に扱っている!」
と不平を言ったところで返ってくる言葉は、
「だって、あなたがたはそういう内閣なんでしょ?」
です。
『 決議 』 平成26年9月19日
朝日新聞が慰安婦問題などにつき虚偽の報道であったことを認めた。朝日新聞が発信してきた虚偽の記事が国際的な情報メディアの根拠となり、国際社会が我が国歴史の認識を歪曲し、結果として我が国の評価、国益を著しく毀損した。朝日新聞の謝罪は国民の名誉と国益の回復には程遠いが、いわゆる慰安婦の「強制連行」の事実は否定され、性的虐待も否定されたので、世界各地で建設の続く慰安婦像の根拠も全く失われた。
わが国は国際社会で一貫して平和と民主主義を希求し実践している。かかる誤った国際認識には断固として正していかなければならない。
国連を始め全ての外交の場、また官民挙げての国際交流の中で、国としての正しい主張を訴え続けることが必要である。しかもその主張は国際社会に正確かつ十分に届かなければ全く意味がない。
わが国は国際関係においても情報の公開や広報の充実強化に努めているが、国の主権や国益を守り抜くためには、単なる「中立」や「防御」の姿勢を改め、より積極的に情報発信を行う必要がある。国としての情報戦略を立てつつ、一方で諸外国の情報、動きを敏感に察知し国としての対応を機敏に行うことが必要である。
国としてそのための積極的政策をしっかりと進めていかなければならない。 以上
周囲の自分に対する見方に不満を爆発させる前に、自分の言動をもう一度見直しましょう。
極右とのつながりをめぐって非難を浴びる自由民主党
ジャスティン・マッカリー
日本の与党が極右から距離をとるよう強く求められている。
トップクラスの政治家たちが極右の政治団体と関係していたためだ。それらの団体はこれまでにナチスの思想を広め、在日韓国・朝鮮人のコミュニティに対する差別的暴力を扇動してきた。
安倍内閣の三人の閣僚に対して極右から離れるよう求める声が上がったのは、リベラルな大学人たちに殺人をちらつかせて脅迫するテロリズムが起きている最中でのことだ。この脅迫事件を、識者たちは日本の急激な右旋回のしるしと捉えている。
山谷えり子国家公安委員長(自民党)は日本警察の最高責任者だが、日本の極右グループと関係しており、在特会の有力メンバーである増木重夫と並んで写真をとっていた。
在特会のメンバーたちはこれまでに在日韓国・朝鮮人を「ゴキブリ」と呼びながら虐殺を公言してきた。にも拘わらず、山谷えり子はこれまで頑として在特会を非難しようとしていない。
山谷は2009年の写真について撮影の記憶がないとしている。この写真が公に問題になった直前には、自民党の他の2閣僚が日本のネオナチ政党の党首である山田一成との写真撮影に応じていたことを認めていた。高市早苗総務大臣、そして稲田朋美自民党政務調査会長は、写真の撮影された当時、山田の極右思想について何も知らなかったと主張している。
山谷は、在特会を非難するように促されると、個別の団体の方針についてコメントすることは不適切であると述べた。「日本というのは和をもって貴しとする、一人一人の人権を大切にしてきた国柄でございます」と彼女は発言した。当の増木は、ロイター通信に対して、山谷とは教育への関心を共有しており10年来の付き合いだと語った。
在特会は、未帰化の在日韓国・朝鮮人に与えられている生活保護やその他の「特権」を廃止するように主張している。およそ50万人にのぼるとされるこれら未帰化の在日韓国・朝鮮人の多くは、第2次世界大戦の前や最中に、鉱山や工場の労働のために朝鮮半島から連れ出された労働者たちの子孫だ。
右翼の活動家たちはいま勢いづいている。朝日新聞が、慰安婦と呼ばれる日本の戦時下性奴隷に関して1980年代および90年代に掲載した記事が誤っていたことを、最近になって認めたからだ。朝日新聞の記事が基づいていた吉田清治の証言は、現在では信憑性を疑われている。元日本軍兵士であった吉田は、現韓国領の済州島から女性を誘拐するのに立ち会ったと主張していた。
朝日新聞が誤報を認めたため、安倍晋三首相や他の有力政治家たちは、日本の国際的イメージを損なったとして同紙を非難し、外国メディアが性奴隷に関する不正確な情報を広めるきっかけになったと主張している。
大学に勤めている朝日新聞の元記者たちは、現在、極右による爆弾テロや殺害予告の標的になってしまっている。極右は彼らを大学から追い出そうとしているのだ。
極右の活動家たちは、朝日新聞の元記者である植村隆の子どもたちの氏名と写真をインターネット上にアップロードしたうえで、その子らを「売国奴」の子として中傷し、その殺害を声高に求めている。植村隆元記者が朝日新聞に戦時下性奴隷問題に関する記事を書いたのは20年前のことだ。
上智大学の中野晃一教授(政治学)は、「〔安倍政権が〕右翼の歴史修正主義者たちによる差別の扇動や暴力に対してなまぬるい姿勢で臨んでいる以上は、たとえ政府がいま起きていることを準備したのではなかったとしても、この脅迫事件に関する政府の処置を批判せざるをえない」と述べた。
植村隆元記者を非常勤講師として雇用している札幌の北星学園大学は、2015年度も彼を雇用するかどうか決定を先延ばしにしている。別の元朝日新聞記者は、所属する関西の大学が脅迫状を受け取った後に辞職してしまった。
法政大学の山口二郎教授は、「安倍首相や他の主導的政治家たちの見解のおかげで、右翼は勢いづいて、大日本帝国時代の歴史を批判するひとびとに対していっそう激烈な攻撃をしかけています」と述べた。
中国や韓国とのあいだで歴史や領土の問題をめぐって緊張が高まっているさなか、安倍首相の内閣改造によって日本が急激に右旋回しているという懸念が生じている。
山谷えり子、高市早苗、稲田朋美は安倍首相の側近であり、戦時下の日本に関して歴史修正主義的な見解を彼と共有している。このひとびとは、日本が1920年代末から1945年の敗戦まで朝鮮人や中国人女性を主とする何万人もの女性たちに対して前線の売春宿で働くよう強いたという周知の事実について、これまでずっと異議を唱えてきた。
安倍改造内閣の閣僚19人のうち15人が属している日本会議は、愛国主義的教育を推進し、戦時下の日本がアジア大陸で行った軍事作戦に関する「自虐史観」を終わらせることを目指して1997年に創立された団体だ。
文部科学省は学校教科書から戦時下性奴隷に関する記述を削除するよう圧力をかけられており、安倍首相はその動きのなかで中心的な役割を果たしている。
山口二郎教授は、現在の右翼の運動は軍国主義者がリベラルな大学人たちの追放や粛清を行った1930年代を思い出させるとしたうえで、「もしも北星学園大学がこの圧力に屈してしまえば、民主憲法下にあっても学問の自由と言論の自由が損なわれる」と語った。「いまは日本社会の運命を大きく左右する瀬戸際にさしかかっている。」