この前買った本


明治東京下層生活誌 (岩波文庫)

明治東京下層生活誌 (岩波文庫)


明治19年1886年)が明治維新以降で最悪の不景気だった年、
と言われているそうです。
この本は、その年に『朝野新聞』に連載された「府下貧民の真況」という、
東京の下層社会を記録した先駆的なルポタージュをはじめ、
明治年間に書かれた東京の下層社会についての文章全14篇が収録されたものです。
幸徳秋水さんの文章も掲載されています。


「貧困問題に関心がある!」という高い志をもってこの本を買ったわけではなく、
ここ数年、幕末〜昭和前期のことにとても関心があるので、
「それらの時代を詳しく知るには、様々な人の生活、状況も知らなければいけないのだろう」
という、なんの捻りもない想いに基づいて買いました。
明治19年1886年)という年は、西南戦争終結大久保利通暗殺などから8、9年、大日本帝国憲法発布、帝国議会開設まで3、4年という、明治時代においての「過去から、現在、そして未来」の狭間のような感じです。
歴史の教科書でも、この時代について書かれた本でも、
メインとするところは、上記のような「事件」であって、
その時代の一般の人々の生活にそれほど目が向けられることはありません。
しかし、「事件」のような、ある意味の恣意的な事柄のみでその時の国が
作られているわけではなく、あやふやな、意識しない「空気」を目一杯吸った一般の人々によっても国は作られているのだろう、と僕は考えています。
「事件」と「空気」は綿密なつながりをもっていて、
相互に影響を与え合っているものです。
それらが絡み合ってコロコロ転がり、何か「事件」が起こった後にそれが再度「空気」を醸成し、新たな転がりをみせる。
そうやって状況が作られて行き、しいてはそれが国の形になっていくのだろうと僕は想像します。


そういう意味で、どの時代もそこに生きる人々の状況を見ることはとても重要なことだと思います。
人々が何に困り、喜び、悲しみ、笑い、怒り、そして泣いたのか。
そんな「空気」が「事件」を創り、国を創っていくのだろう。
僕はそんな風に思います。
僕は、「国」を知りたいので、逆算して「空気」に触れてみたいと思ったわけです。