今日の一作 〜 映画『蛇の卵』

監督が、イングマール・ベルイマンさん。
(Ingmar Bergmanと書くそうで、バーグマンではないか、と思うのですがそうでもないようです。。)
世界的に有名な監督のようですが、 全く知りませんでした。
ウィキによると40作近くの映画を撮られているようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/イングマール・ベルイマン


この映画を観る前に『狼の時刻』という
ベルイマン監督の映画をDVDで観たのですが、これがすごい。
何がすごいって、
映画解説者による解説が映画のバックで延々と流れているのです。
最初何だかわからなくて、うるさい映画だ、と思ってたのですが、
普通にDVDの特典でした。オフにできました。
解説がある、というそのことが、
『狼の時刻』という映画を物語っている、
と観終わった後に感じました。
非常に難解でした。
難解というのは、「わからない」というより解釈の仕方が無数にある、
という類いのもので、この監督の作品にますます興味が湧いてきました。


そして、今作『蛇の卵』です。
これもDVDで観ましたが、しっかり解説が付いてました。
「ヒントをみっけてね〜」的な関係者のインタビューも付いてました。
内容はこんな感じです。


1923年のベルリン。
サーカスの空中ブランコ乗りのアベル・ローゼンバーグは巷で起っている不可解な殺人事件の容疑者となる。サーカスを去ってからのここ一ヶ月、彼は毎日飲み歩き売春宿やキャバレーを常宿としていたのでアリバイはない。結局、容疑不十分で釈放されたアベルは、兄の妻と暮らし始める。彼の死んだ兄の妻との愛で一旦は立ち直ろうとするが、生活の行き詰まりから二人の関係も破綻してしまう。ある日、朝帰りしたアベルは部屋で彼女の死体を発見し、思わぬ事実を知らされることとなる。
amazonより)


まさに、ヒトラーの権力掌握前夜、といった趣のベルリンが舞台です。
その陰影が場面場面で漂っています。
街の人々、道々、建物、お店、空気、全てが一点に集まっていくような、
「不思議な磁力」が「陰影」という言葉にしっくりきます。
みんなが行き着くところ、と言えば、
それは30年代〜40年代半ばのドイツそのものでしょうか。


なぜにドイツはあれほどまでに他国を奪い取ったのか。
なぜにドイツはユダヤ人を虐殺したのか。
なぜにドイツは第三帝国を夢想したのか。


その理由がこの時代、この映画には凝縮されています。
映画内で象徴的な台詞があります。
「憎しみは親から子へ受け継がれる。憎しみをもって生きることで、それは時間とともに増幅される」
(正確ではありませんが、だいたいこんな感じ。。)


ドイツ人がなぜにヒトラーを支持したのか。
ある出来事など文字で残る決定的な理由があったのかもしれないけど、
根底には「憎しみ」があったのかもしれません。
「憎しみ」を基軸に思索、行動の先が、
破壊的・破滅的な戦争だったのかもしれません。


特にこの映画は戦争を扱ったものでも、
ヒトラーが出てくるわけでもありません。
戦争云々という話は全くでてきません。
ただ、戦争そのものを描くより、その陰を描くことの方が、
なぜに戦争は起こったのか?という疑問に対して、
有効なのではないか。
この映画を観てそんな風に感じました。
戦争に限らず、
個人的なことでも、あることの原因理由を探る時、
そのものずばりではなく、その周辺を探ることで
何かが見えてくるのかもしれません。多分。


ただ、多分観る時によって、この映画の解釈は変わるんだろうなあ、
思います。
解説やインタビューではまったく違うことを言ってましたし。
また観る時は果たしてどんな解釈をするのか、できるのか。
楽しみです。