「文化芸術懇話会」での発言について


昨夜報道された自民党の「文化芸術懇話会」という会合に関してです。
この会合で自民党議員、作家の百田尚樹氏の発言が報道のメインです。
まずはその報道から。

自民党:安保法案で報道批判続出…改憲派の勉強会


安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。


 ◇議員「マスコミこらしめるには広告料収入なくせばいい」


 出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。
 出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。
 沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。
 懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。
 出席者の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない」と苦言を呈した。


◇報道・表現の自由への挑戦


 琉球新報社の潮平芳和編集局長の話 百田氏が何を論拠にしたのか明確ではないが、「つぶさないといけない」という発言は沖縄2紙のみならず、国内のマスメディア全体の報道・表現の自由に対する重大な挑戦、挑発である。沖縄の現状を全く理解しておらず、残念である。琉球新報は今後とも不偏不党、言論の自由を重んじ、公正な取材活動と報道に努める。


 ◇断じて許すことできない


 沖縄タイムスの崎浜秀光編集局次長の話 安全保障関連法案は「憲法違反」との指摘が相次ぎ、反対する世論の広がりに対するいら立ちが(百田氏の発言に)出たと言わざるを得ない。70年前の沖縄戦で、沖縄は本土の「捨て石」にされた。「中国に取られれば目を覚ますはずだ」との発言は、再び沖縄を捨て石にしようとする発想で、断じて許すことができない。(共同)


毎日新聞  6/25
http://mainichi.jp/select/news/20150626k0000m010122000c.html

経団連に働きかけ、マスコミ懲らしめを」 自民勉強会


 出席者によると、議員からは「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだという意見が出た。


朝日新聞 6/25
http://www.asahi.com/articles/ASH6T5W6FH6TUTFK00X.html?ref=yahoo

「沖縄の地元紙、左翼に乗っ取られている」 自民勉強会


出席者などによると、講師役として招かれた、首相と親しい作家の百田尚樹氏は「もともと普天間基地は田んぼの中にあった。そこを選んで住んだのは誰やねん」「沖縄は本当に被害者やったのか。そうじゃない」などと答えたという。


朝日新聞 6/25
http://www.asahi.com/articles/ASH6V3PL5H6VUTFK00F.html


自民党議員、百田氏の言葉を確認します。


自民党議員>
「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」
「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」


<百田氏>
「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」
「もともと普天間基地は田んぼの中にあった。そこを選んで住んだのは誰やねん」「沖縄は本当に被害者やったのか。そうじゃない」


この件に関して、本日の国会で民主党・寺田学議員が安倍首相に質問をしていたのを見ましたが、
そこではもっと他の言葉も紹介されていました。百田氏の言葉でしたが、よりひどいことを発言していたようです。
国会中継動画】
https://www.youtube.com/watch?v=pmrPqgLlVsI&feature=youtu.be



一夜明けて本日もこれについての続報が出てきています。
各新聞、それをソースにしてのツイートを確認していますが、百田発言についての方が多いように感じます。それは百田発言の方がエッジが効いているからではないかと思います。
「沖縄の新聞2紙を潰してしまえ」「沖縄は被害者ではない」など、その言葉が出る禍々しさが、ある意味人を惹きつけ、何か意見しなければ、反論しなければという感情を沸き上がらせるのではないでしょうか。
本当にひどい発言だと思います。
しかし、どちらをより問題にすべきかといえば、それは圧倒的に自民党議員の発言ではないでしょうか。
それは発言内容の比較ではありません。発言者の立場の問題です。
百田氏は作家です。専門的な知識も有していない´たかだか´作家であり、´特異な´考えをもった個人です。
発言内容自体非難されるものだと僕は思いますが、「またすごいこと言ってるな」という冷たい目でみるだけです。
自民党議員の発言はそんな目で見ているだけで済まされるものではありません。
権力をもっている(と一般に認識される)立場の者による言葉として、あまりに暴力的すぎます。
ここまで見事な報道圧力を意味する言葉はなかなか想像できません。
この発想はあまりに直線的であり、短絡的であり、そして幼稚です。比喩ではなく、小学生低学年の発想です。
仮にこの言葉が百田氏のものであるなら、僕は冷たい目を送りながら「決してこの人には近づかないでおこう」と思えば済みます。
しかし、現在の政権を担う自民党の議員による言葉であるならば、それを見過ごすことはできません。
百田氏の言葉が「その場」のものであるのに対し、自民党議員の言葉は「その後の可能性」を有しているからです。
実際に経団連へ有効な手段で働きかける可能性、スポンサー企業に有利な政策を立案しスポンサードをやめさせる可能性、報道圧力の意思を前提にして他の政策を行う可能性など、様々な「その後の可能性」があります。
それを有するものこそ、権力者なのです。
権力者の言葉として、今回の自民党議員の発言を国民は許してはなりません。
これは右だか左だか、保守だか革新だか、何でもいいのですが、党派性によらず、全ての国民が許してはならない。
なぜなら、権力者が気に入らない報道機関を押さえ込むそのことが問題だからです。
仮に自民党議員の発言に賛成の考えをもっていたとしても、権力者によるこのような振る舞い自体は決して許してはいけないものなのです。
そのことは全国民の共有すべきこの国の形ではないでしょうか。
思想、考え、意見などの前に厳然とあるべき形です。
自民党議員の発言は、この国の形への挑戦といえます。


話題性もあり、この件が百田氏の発言をメインに報じられ、語られているような気がしていますが、見誤ってはならない、と僕は思います。
自民党議員の発言に力点が置かれるべきです。自民党は百田氏の発言を「作家の方個人の発言ですし」と逃げを図っています。百田氏をトカゲの尻尾きりで切り離して、このことを終わらすつもりでしょう。
百田氏も喜んで切られるでしょうから。「俺、作家だし」と。
いわば阿吽の呼吸のトカゲの尻尾きりです。
この問題をそんな寸劇に目を奪われてはなりません。
あくまで「この国の形を破壊する意思を示した政権与党である自民党議員の発言」を中心として僕はこの件を語っていきます。


百田氏「沖縄2紙つぶせ」発言は「雑談の中で冗談として言った」
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2015/06/26/kiji/K20150626010613600.html


冗談らしいです。これも「俺、作家だし」の一種です。



このような議員によって支持されている安倍氏というものもまた考えた方がよいと思います。