気になるニュース 2015/3/30


2本のニュースを取り上げます。

“再生エネ”急増で…家計に上乗せ、年額5688円↑


原油安にもかかわらず、電気料金が値上げされます。太陽光などの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まった3年前の夏は、一般家庭で一月6910円のうちの66円が「再生エネルギー」向けに上乗せされていましたが、その後、高い値段で契約した発電が次々に始まり、去年5月は一月8058円のうちの225円が、今年5月からは倍増の474円となります。


 (経済部・内田栄一記者報告)
 一面に広がる太陽光パネル、こうした再生可能エネルギーの発電が急激に増えたことが家計に重くのしかかってくる原因となっています。固定価格買い取り制度で、電気代に上乗せされる額は5月から標準家庭で月474円、年間で5688円と2014年度の倍以上に増えます。これは、政府が再生可能エネルギーの導入を促すため、当初、1kWhあたりの買い取り価格を42円や38円などと高く設定しましたが、その契約分の運転が次々と始まったことが主な要因です。今後、高い契約分の発電が増えるため、家庭の負担もさらに増える見通しです。クリーンエネルギーを普及させるためには、増え続ける負担を利用者がどこまで我慢できるかがカギとなります。


テレビ朝日 3/20
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000046764.html


ちょっと前のニュースですが、本日気づいたので。
「再生エネルギー分の電気代が昨年比で約2倍になりますよ」
といった主旨と僕は解釈したニュースです。


記事の一行目
原油安にもかかわらず、電気料金が値上げされます。」
最後の一文
「クリーンエネルギーを普及させるためには、増え続ける負担を利用者がどこまで我慢できるかがカギとなります。」
をつなげれば、このニュースに込められた意図は理解できます。
この画像を加えれば完璧です。



(画像1)


原油安にもかかわらず、電気料金が値上げされます。クリーンエネルギーを普及させるためには、増え続ける負担を利用者がどこまで我慢できるかがカギとなります。」
ということを視聴者に伝えることを意図したニュースなのでしょう。
どのような意図をもつかはテレビ局や番組の自由なのでけっこうなのですが、あまりにリードが露骨なのでそれを指摘しておきます。


まず、上の画像をみると、あたかも再生エネルギーの料金だけ上がるような印象を受けますが(「原油安にもかかわらず」と記事で触れているにもかかわらず)、2015年5月の再生エネルギー以外の料金は下がります。(あくまで平均モデルですが)
東京電力がそのことを公表しています。



(画像2)(クリックで拡大できます)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1249271_6818.html


記事は「再生エネルギー料金があがります」という主旨だから関係ないのかもしれませんが、
画像1のような図は誤った情報を視聴者に与える恐れがあります。
(このニュースの放送が3/20で東京電力の5月料金の公表が3/30と、放送時にはまだ5月料金が分かっていないことを考慮しても)
「再生エネルギー料金が約2倍になることで家計負担があがります」というのを強調した図ですが、
実際は4月と5月の料金差は、東京電力によると5月の方が18円プラスです。
確かに料金はあがります。再生エネルギー料金が約2倍になることも事実です。
しかし、実際にあがるのは18円です。図1の印象とはだいぶ違うような気がしませんでしょうか。
最初に引用ニュースをみたときと、詳細を調べてみたあとで僕の印象は全く違ったものになりました。
このリードの仕方はいささか露骨すぎやしないか、と感じました。
「再生エネルギーのせいで料金があがるんですよ!」という強烈な意思をオブラートにもくるまずだしてきたような。
その結論が、
「クリーンエネルギーを普及させるためには、増え続ける負担を利用者がどこまで我慢できるかがカギとなります。」
なんですから、驚きを通り越してちょっと呆れてしまいます。
「再生エネルギーって大変なんですよ。我慢なんて嫌でしょ?」
という言葉が含まれているようで。
「我慢」がカギになるって、どれだけ思考を停止させているんだよ、とツッコミをいれたくなります。
しかも、テレビ局の経済分記者なんでしょ。
その立場の人がまず考えるべきことは、利用者の我慢ではなく、政府の政策や企業の技術開発など、制度や技術力の方でしょう。
そのような人にはそれをオススメします。いきなり「利用者の我慢」なんていったら、「無能」の烙印押されますから、と。
露骨な意図の締めが「利用者の我慢がカギ」という結論であることに、リードの悪意と記者の稚拙さを感じ、げんなりなったというのが、僕の結論でございます。


また、もう一つ付け加えておきたいと思います。
ニュースで「原油安にもかかわらず、電気料金が値上げされます。」とありますが、正確ではありますが、ちょっと足りない内容と言わなければなりません。
現在の日本において、電気料金に影響を与えるのは、原油よりもLNG天然ガス)です。下の図は2013年度の日本の電源別発電電力量構成比です。



(クリックで拡大できます)
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/pdf/kaiken_s1_20140523.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E6%A7%8B%E6%88%90'


原油14.9%に対して、LNGが43.2%です。明らかにLNGの方が比重は大きくなっています。
原油安にもかかわらず、電気料金が値上げされます。」よりも、
LNG安にもかかわらず、電気料金が値上げされます。」の方が正確です。
実際にLNGの料金は2012年をピークに落ちてきています。




(クリックで拡大できます)
http://ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html


この辺もより正確な情報であってほしい、と思った次第です。


このようなニュースをみると、「ニュースをそのまま受け取ってはいけないな」ということを強く思います。
改めて肝に銘じたニュースでしたので、取り上げました。


報道ステーション:古舘キャスターと古賀氏のやりとりは…


 テレビ朝日の27日夜のニュース番組「報道ステーション」で、古舘伊知郎キャスターと、コメンテーターを務めた元経済産業省官僚の古賀茂明氏とが激しく応酬するハプニングがあった。古舘キャスターとコメンテーターの古賀氏とのやりとりは次の通り。


毎日新聞 3/28
http://mainichi.jp/select/news/20150328k0000e040223000c.html


これは、毎日新聞えらいなあ、と思った記事です。
例の(といっていいでしょうか)、3/27(金)の『報道ステーション』における、古舘さんと古賀さん(おお、漢字が似てる!)のやり取りの全文文字おこしです。
もちろん、ある出来事に対して解説したり、論評をあたえることが大切なジャーナリストの仕事だと思いますが、事実を正確に伝えるということもまたジャーナリストの大切な仕事であるはずです。
この記事は後者の役割をしっかり果たしたものです。
新聞に僕が最も期待したいことは、この手の事実の正確な伝達です。
特に時系列の表などを充実させてほしい。
例えば、憲法に関する国会での議論を時系列にした表とか。
「答えを与える」のではなく、「考える材料を与える」ものに力をいれた新聞が今後貴重になるような気がします。僕が欲しいだけですが(笑)。