気になるニュース 2015/3/4

2本のニュースを取り上げます。

防衛省:文官統制見直し方針「背広組と制服組」対等に


政府は26日、防衛省設置法改正案に防衛官僚(背広組)と自衛官(制服組)を対等と位置付ける規定を盛り込む方針を固めた。軍部が暴走した戦前の反省を踏まえて規定された背広組が制服組を監視する、いわゆる文官統制の考え方を見直し、双方の縦割りを解消して自衛隊の部隊運営などで効率化を図る。来週にも閣議決定し、国会に提出する。


防衛省設置法12条は、1954年の防衛庁設置時の規定と同様に、防衛相が各幕僚長に指示・承認・一般監督を行う際に背広組幹部が「防衛相を補佐する」と規定している。「背広組=文官」が制服組の部隊運用などを監視する仕組みと解釈されてきた。


 改正案では12条を改正し、背広組幹部が「政策的見地」、制服組幹部が「軍事的見地」から、それぞれ防衛相を補佐するとし、双方の立場を事実上、対等に位置付ける。一方、背広組の所掌事務に総合調整機能を加え、最終的に施策の統一を図る役割は背広組にあると役割を明確化した。そのうえで、部隊運用を担当する背広組の運用企画局と制服組の統合幕僚監部(統幕)を一元化。背広組と制服組の縦割りを解消し、一体で部隊運用の立案に取り組むこととし、迅速化を図る。


(中略)


 ◇防衛省設置法改正案の骨子
・装備関連部門を一元化し、コスト削減などを図る「防衛装備庁」の新設
・背広組と制服組に重複があった部隊運用の部門を統幕に一元化
・背広組が政策面、制服組が軍事面からそれぞれ防衛相を補佐すると規定
・背広組の所掌事務に総合調整機能を追加


毎日新聞 2/26
http://mainichi.jp/select/news/20150227k0000m010103000c.html


少し前の話題ですが、やっと整理できたので取り上げたいと思います。
防衛省設置法12条を見直して、防衛相を補佐する役目を背広組(文官)から、対等の立場で背広組と制服組(自衛官)とに移すという内容です。
簡単な図にすると


<これまで>
防衛相 ← 背広組 ← 制服組


<変更案>
防衛相 ← 背広組
     ← 制服組


といった感じでしょうか。


まず言葉の確認をします。

<文官統制>
政治が軍事より優先されるという、民主主義国家の基本原則「文民統制シビリアンコントロール)」の一環。防衛省設置法の規定では、背広組の文官を制服組自衛官より優越した立場に置くことで、防衛省内の文民統制を補強する役割を果たしている。憲法では、首相や閣僚は文民でなければならないことを明記。国の防衛に関する事務は内閣の行政権に属し、国会が防衛出動の承認などの権限を持っている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015022702000261.html

防衛省設置法12条>
(官房長及び局長と幕僚長との関係)
第十二条  官房長及び局長は、その所掌事務に関し、次の事項について防衛大臣を補佐するものとする。
一  陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する各般の方針及び基本的な実施計画の作成について防衛大臣の行う統合幕僚長陸上幕僚長海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)に対する指示
二  陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する事項に関して幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画について防衛大臣の行う承認
三  陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊又は統合幕僚監部に関し防衛大臣の行う一般的監督
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO164.html


筆者注
※ 官房長及び局長=背広組(文官)、幕僚長=制服組(自衛官


この目的は引用記事にもありますが、より率直な言葉で中谷防衛相が語っています。

中谷防衛相は、「ミサイルが飛んできたり、不審船がやってきたときの対処なども速やかな判断、行動が必要でありまして」、「政策的な見地も加味をして、私の所に報告していただく方が、時間的なロスがないと」と述べた。


FNN 3/1
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00287350.html


要は、差し迫った時に背広組を介していたら時間がかかるから、直接防衛相と制服組がいろいろ決める方が早くていい、ということですね。
これは、前提として「差し迫った時」を想定したもので、集団的自衛権行使やホルムズ海峡機雷撤去など、安倍政権の一連の流れの中に置かれるものなのでしょう。


着々と進めている印象です。
この流れをみていると、安倍政権というのは最短距離で目的を達成しようとする、という特徴があるように思います。
それは彼らが好んで使う「決める政治」や「強いリーダーシップ」という言葉がよく表しています。


「強いリーダーシップ」により最短距離で目的を達成するのが「決める政治」だ


と。
それを実現するコツは、自分の能力を磨き、発揮する方法と、障害となるものを排除・無視する方法があります。
安倍政権がどちらの方法を取っているかは明らかなことです。
後者の、障害となるものを排除・無視する方法です。
それによって「決める政治」を実行しています。
具体的には、国会審議で質問者の質問に全く答えない(2/3の「イスラム国」についての共産党・小池議員の質問など)や、「後藤さん、湯川さん殺害の責任は私にあります」「西川大臣の任命責任は私にあります」など「責任」に言及して責任逃れをしていること、政権に都合のよいNHK会長人事・日銀総帥人事・内閣法制局長官人事などがあげられます。
障害となるものとは、時間がかかるものと言い換えてもよいでしょう。
人の話を聞かない、適当にごまかす、自分の意思を直接反映させるという、非時間のかかる方法を連続させています。
安倍政権は、時間のかかるものを徹底的に拒絶しています。
彼らが民主主義的なものを嫌うことは、その意味で当然です。
民主主義ほど時間のかかる政治体制はありませんから。


そのような効率化体質は安倍政権に染み付いている特徴の一つだと思います。
今回取り上げた記事もその一環として考えることも可能なのではないかと思います。
つまり、自衛隊内の効率化という意味において。


防衛相 ← 背広組 ← 制服組

防衛相 ← 背広組
     ← 制服組


を比べたとき、圧倒的に後者の方が効率的=時間がかからない、という判断を政権の体質が求めたのではないか、ということです。
「差し迫った時」を想定してそのために自衛隊を動きやすくしておく、という今後を見据えた「真っ当な理由」よりも、実はもっと単純で、効率化を求めただけなのではないか?と思ってしまいます。
「何かこれって無駄じゃない? 効率化しようよ」と。
安倍政権の「無駄なものを排除する体質」は、それが目的となる可能性があるほどに身に染み付いているのではないか、と僕は推測しています。
何かの目的のために無駄なものを排除する、という通常の理路ではなく、時に、無駄なものを排除することが目的になっている、のではないか。
それは、同時にこのようなことを意味します。
効率化したその後のことは考えられていない、ということです。


引用記事をみても疑問に思うことがあります。
仮に戦争状態になったとします。自衛隊が前線に立って戦闘をしている。
そのような状況において背広組は邪魔である、ということで、背広組と制服組を対等にするということで、確かに防衛相と制服組が直接進言をすることができ、背広組が中にいるより時間が少なくすむでしょう。
ただその現実を想像してみると、現場で戦闘をしている集団=制服組の言葉が圧倒的な力をもつようになり、防衛相、ひいては首相もその言葉に抗えないようになるのではないでしょうか。
「現場でこうなっているんです! 早く決断してもらわないと隊員が死んでしまいます!」
「私たちは現場を知っています!」
といった、状況による言葉、さらに、身体を張っている人が優勢になるという世間の在り様としての言葉によって、制服組は力は増大するのではないかと思います。
これを「軍部の暴走」という言葉で表現すると一気に何段も飛ばすことになってしまい理路を失いそうですが(そもそも「軍部」ではないし)、相対的に政治家の力を落とすことになることは確かです。
その政治家とは、安倍政権からしたら自分たちです。
彼らは戦争になったとき、自分たちが政権にあると当然思っているでしょう。
特定秘密保護法という、自分が政権にいなかったら強力な鎖になるであろう法律を嬉々として制定しているのですから、彼らが野党になることを1mmも想像していないでしょう)
そんな時に、自分たちが自衛隊(制服組)に´煽られる´ということの可能性を全く想定していないのではないか。
自衛隊を効率化することによる自分たちへ及ぼす影響を考えていないのではないか、と想像してしまうのです。
ただ効率化をすることに一生懸命になって。
中谷防衛相の言葉を聞くと、それが信憑性のあることじゃないか、と思ってしまいます。

中谷元防衛相の記者会見での「文官統制」に関する主なやりとりは次の通り。


●記者 「文官統制の規定は軍部が暴走した戦前の反省から作られたのか」
△中谷氏 「その辺は私、その後生まれたわけで、当時、どういう趣旨かどうかは分からない」
●記者 「戦前の軍部が独走した反省から、先人の政治家たちが作ったと考えるか」
△中谷氏 「そういうふうに私は思わない」
●記者 「戦前の反省からできた規定とは思わないのか」
△中谷氏 「政府としては、文官が自衛官をコントロールする文官統制という考え方はしていないし、それは本当の意味での文民統制ではないと思う」
●記者 「文民統制は、戦前の軍部が暴走した反省から作られたのか」
△中谷氏 「そもそも自衛隊というのは、旧軍から違う組織としてできた。文民統制というのは、文官が統制をするといったことを政府として言ったこともない。国会でも、文官が自衛隊をコントロールするという趣旨を述べたというのには、私はまだ接していない」


東京新聞 2/28
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015022802000133.html


中谷防衛相は、自分が生まれる前のことには関心がないようで、その時代の軍隊がどのような動きをして、どのように力を持っていったか知らないようです。
そのことにも想像力を働かせることもしないようです。
この人は、軍隊が力をもっていく過程について知識がないことを告白しています。
武力をもつものがいかに影響力をもっていくか。そこに想像力を使うことの意思がなさそうです。
2.26事件のときの陸相・川島義之に象徴される「下から突き上げられる」大臣の在り方について、しっかり想像力を働かせるべきです。
そのことも考えずに、制服組=武力をもつものの力を増幅させるような変更を行うことは、あってよいことだとは僕は思いません。
政権の首を締めるのはどうでもいいけど、それによって日本国民の首も締めるようになったらたまったもんじゃない。
あなたがたの好きな「効率化」の結果そんなことになったらたまったもんじゃない。



最近は、戦争の現場についての本や映画などに触れる機会が多いです。
『本当の戦争の話をしよう』伊勢崎賢治さん 朝日出版
『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケルさん 亜紀書房
映画『アメリカン・スナイパー
これらを読み観すると、安倍政権の語る自衛隊法変更がいかに戦場に即したものでないかを感じます。
彼らの語る言葉は浮遊しています。
引用記事の内容についても、その流れの中で考えざるを得ませんでした。
「真っ当な理由」ではなく、彼らの言葉が浮遊することを前提に、逆算して考えてみました。
書いてみてあながち間違いでもないんじゃないか、とも思ったりしましたが(笑)。



最後にもう一つ。

首相・岡田氏側にも献金 補助金交付企業側から


安倍晋三首相(60)が代表を務める政党支部が平成25年、経済産業省補助金交付が決定していた大手化学メーカー「宇部興産」(東京)から50万円の献金を受け、民主党岡田克也代表(61)が代表を務める政党支部も、同氏が副総理だった24年、子会社への国の補助金交付が決まっていた食品大手「日清製粉グループ」(東京)から24万円の献金を受けていたことが2日、分かった。


 国庫が原資の補助金を受けた企業からの政治献金が問題となる中、「政治とカネ」をめぐる問題は首相と野党第一党の党首にも波及した形だ。


 政治資金規正法は国からの補助金の交付決定通知から1年以内の政党や政治資金団体への寄付を禁じている。また、政治家側は交付決定を知らなければ刑事責任を問われない。「試験研究」「災害復旧」などに関係する補助金はこの規定の例外となっている。


 安倍氏が代表を務める「自民党山口県第4選挙区支部」の収支報告書によると25年12月、宇部興産から50万円を受領した。


 一方、経産省によると25年4月、セメント製造を省エネ化する技術を開発する「革新的セメント製造プロセス基盤技術開発」事業として、宇部興産に対し、他の化学メーカー3社と合わせて計約1億1200万円の支給が決まっていた。


 岡田氏については、「民主党三重県第3区総支部」の23、24年分の収支報告書によると、同支部は両年の各6月に日清製粉グループから各24万円の寄付を受領。同社の子会社「日清製粉」は両年の各4月、農林水産省の「食糧麦備蓄対策事業」で各約15億円が交付決定していた。


農水省によると、同事業は小麦の安定供給のため、保管を企業に委託して、その費用を支給するもの。
 ただ、政治資金規正法補助金交付企業の献金禁止規定について「受給側に利益とならない補助金」を例外としており、この例外規定に当たらなければ、同法に抵触する可能性がある。
 産経新聞の取材に対し、日清製粉グループ本社は「利益にならない補助金のため、規正法の例外規定に当たる」と回答している。
 また、岡田氏の事務所は「日清製粉グループは補助金を受けた日清製粉とは別法人なので違法性はない」と説明している。


 産経新聞安倍氏の事務所にも取材しようとしたが、連絡がつかなかった。


産経新聞 3/3
http://www.sankei.com/politics/news/150303/plt1503030008-n1.html


産経新聞の記事ですが、この記事はなんといっても最後の一行。
産経新聞安倍氏の事務所にも取材しようとしたが、連絡がつかなかった。」
味わい深い言葉ですね。
もう何もいうことないです(笑)。