「武力行使の3要件」の適用に関する安倍氏答弁


cangaelさんのブログに書いたコメントが我ながらなかなか興味深かったので、
自分のブログにちょっと書き足してUPしたいと思います。


cangaelさんのブログ
http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140716/1405464620

◎ここまで書いた時点でNHKの夜9時のニュース。何というタイミング!! 大越キャスターがジョセフ・ナイ氏とインタビューです。


ここで、2012年のアーミテージレポート(*INSS=アメリカの国家戦略研究所レポート)が出てきます。レポートが指摘・要望してきた課題であった憲法上の制約に風穴を開けた安倍首相に早速お祝いメッセージを送るとともに、米国の極東アジア政策の邪魔をするなと歴史認識問題で事を荒立てて日中間にこれ以上波風立たすことの無いようにと注文です。ジョセイフ・ナイ氏もアーミテージ氏もジャパンハンドラーと言われる大物。だいたいこの人たちの意見通りの日米関係になってきました。


大越キャスターの「阿部首相の決断をどう評価するか?」には、「日本防衛のため、同盟関係の中で米国と協力できるよう集団的自衛権を構築することは正しい方向への第一歩だ」。ただし、ここでNHKはタイトルを「知日派の忠告」と入れます。そして、「外交は過度のナショナリズムに陥らないことも非常に重要」と答えた後で、「ジョセフ・ナイ氏は元クリントン政権で国防次官補をつとめ、アーミテージ元国務副長官らと日米同盟強化について政策提言をした対日政策の理論的支柱」と紹介。



大越氏の「日本が集団的自衛権行使すると米国にどんなメリットがあるのか?」には、ナイ氏は「不測の事態が起こった場合手続きが整わず行動を起こせないのは困る。日米両国にとって非常に良い」。


大越:「必要最小限度の集団的自衛権行使については?」にナイ氏は「極めて限定的だと思う。たとえばウクライナで米国がソ連と戦争になっても日本が巻き込まれることはない。」


日中関係」と「日本外交」についてのナイ氏の要求は、「靖国や歴史問題に関する日本の声明は日本にとってマイナスであってもプラスにはならない。来年は第2次世界大戦終結70周年を迎え中国は歴史問題を再燃させる。中国が歴史問題を対日批判の道具にしているのを忘れてはイケナイ。日本は慎重に対応して罠にはまっていけない。」そしてナイ氏は最後に、「米日中の良好な三角関係を望んでいる。ただしこの三角は正三角形ではない。日本と米国は同盟関係なんだから、そんなに疑わなくてもよい(焼きもちやかなくてもいい…みたいな言い方?)」ということです。


いつもならこの人(たち)を通してアメリカの意向を伝える日経新聞が大々的に取り上げる人物が、この時点でNHKに登場とは!?! 要は、せっかく日米同盟の新たな一歩をやっと踏み出した今、過度なナショナリズムは控えるようにと釘をさしたわけです。そのまま有難く伝える大越氏は安倍放送局のキャスターから今度は一転、アメリカのスポークスマンに見えました。


このインタビュー、僕も見ました。
「なぜ今のタイミング?」ということを考えると、cangaelさんの言葉が適切な感じがしますね。
「大越氏は安倍放送局のキャスターから今度は一転、アメリカのスポークスマンに見えました。」
安倍放送局はアメリカの支局のようなので、支局から「親会社の意向を伝えなさい」とあったのでしょうか(笑)。


この中でナイ氏は極めて重要なことを示唆していると思います。

ナイ氏は「極めて限定的だと思う。たとえばウクライナで米国がソ連と戦争になっても日本が巻き込まれることはない。」


ここに日本の集団的自衛権の本質があると思います。
この言葉は、「アメリカは仮にロシアと戦争になっても、日本に要請しませんよ」というアメリカの意思です。
安倍氏は14日の集中審議で、

「仮に機雷が敷設された場合、相当の経済危機が発生したといえる。日本に向かう原油の8割はそこを通る。誰かがやらなければ危険はなくならないわけで、我が国の国民生活に死活的影響が生じる」
http://www.asahi.com/articles/ASG7G2T67G7GUTFK001.html


と述べ、武力行為として国際的に認められている機雷除去をやる宣言をしました。
さらに15日の集中審議で、

「今現在、直ちに新3要件の対象になるとは考えていない」とも述べ、南シナ海の領有権をめぐり、中国とベトナムなど沿岸国が対立している現状は対象に含まれないとの認識を明らかにした。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014071500688


と、南シナ海の領有権争いに関しては集団的自衛権外であることを表明しました。
しかし待てよ、と思います。
そもそも日本の集団的自衛権容認って中国と北朝鮮の危険性が増大しているから必要、
という論理で始まったものではなかったのか?
そこを刺激して国民の支持を取り付けようとしたのではないか?
肝とも言える対中国をあっさり「対象外です」と言ってしまったことに、
集団的自衛権容認を支持する人ははしごを外された思いがするのではないかと想像します。


しかし、引用したナイ氏の言葉を前提におけば、なぜホムルズ海峡での機雷除去は集団的自衛権の対象とし、南シナ海における中国をあっさり対象外とするのかが、ハッキリスッキリすると思います。
つまり、アメリカの要請・命令があるか、ないか、です。
機雷除去はアメリカの要請・命令があり、中国関連にはそれがない。(むしろ中国には手を出すな、とナイ氏はインタビューで話していますね)
日本の集団的自衛権の本質は、戦後一貫して続くアメリカ支配の単なる一つである、ということなんだと僕は考えます。

「政府が全ての情報を総合して判断する。主観的な判断や推測ではなく、客観的かつ合理的に疑いなく認められるものだ」と強調、判断に当たっては客観性を重視する考えを示した。


先に引用した時事通信の記事中にこんな安倍氏の言葉があります。
なるほど、「客観的かつ合理的」とは、「アメリカ様のご意向」のことなのですね(笑)。
まさに主観的でない!


安倍氏によると原油の輸送に支障をきたすと、
「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」
にあたるそうなので、
日本の原油の輸送ルートを調べてみました。


http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g60214a08j.pdf
資源エネルギー庁 平成18年)


http://www.jsanet.or.jp/seminar/text/seminar_117.html
日本船主協会


安倍氏は、
「(ホムルズ海峡は)日本に向かう原油の8割はそこを通る」
から機雷除去が必要=集団的自衛権の対象内だと言っていますが、
マラッカ海峡南シナ海のルートも日本船主協会によると、
「日本の輸入原油の8割が通る」
ようです。
中東の方の8割は国民生活に死活的影響が生じるけど、
南シナ海の方の8割はそうではない理由を是非聞かせていただきたいと思います。
中国とベトナムやフィリピンが戦争を始めたら、関係のない国でもそこを通過することに危険性はある、と考えた方が自然のような気がします。
もし「日本に向かう原油の8割」の輸送が邪魔されることが、
「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」
であるなら、同%が通る南シナ海も充分中東と同様の処置が必要なのではないでしょうか。
もし、適用方針を自分たちで決定することができるのなら。