TIME誌 ― 安倍晋三に関する記事訳その3

The China Card


 日本が右傾化する要因は外界にもある。それは、国家主義者のもう一方のリーダーである習近平書記長率いる中国の飛翔である。2012年、民主党施政下にあった日本は東シナ海無人の諸島を国有化したが、中国から猛烈な抗議を受けるに至った。それ以降、中国軍は論争の海である尖閣諸島付近に戦術的展開を増加させた。そして2013年の日本の航空機による緊急発進は、冷戦以来で最多となった。中国は尖閣諸島上空を防空識別圏として宣言した。そしてその防空識別圏を通る歳は中国当局に通告するように要求した。アメリカはその要求を無視し、世界においても不安定な地域の状況を変化させる中国を批判した。


 2007年、安倍が第一期の総理大臣を辞職する時、アメリカの調査シンクタンクであるピュー・グローバル・アティチューズ・プロジェクトの調査では、日本人の67%が中国に対して否定的な見方をしていた。2013年までには、その数字が93%に上昇をしていた。中国の急激な軍事力増強に対して、安倍が言う自衛隊増強はまったく的はずれなこととはみなされなかった。2013年、日本の軍事予算はここ10年では、―ささいな額だが― 最も大きくなった。2014年はその数字がさらにあがっている。


 一方、日中の関係は凍りついているが、経済においてはそうではない。中国は日本の最大の貿易パートナー国であり、2012年には双方において3,300億ドル以上の額にのぼった。安倍はいまだに一度も習近平と会談をしておらず、それは世界第二と第三の経済規模を誇る国の間に会話なないことを意味している。とりあえず尖閣諸島のことはおいといて、二国のホットライン設立を日本が提案したが、中国はそっけなく断った。そして、日本は領土問題が存在していることを認めるべきだ、と中国は要求するが、今度は日本がそれをそっけなく断った。アメリカは日本名で尖閣諸島、中国名で魚釣島の領有に関してはどちらの側には立つことはないが、アメリカ政府は無人岩礁である尖閣諸島について日米安保条約の範囲内にあるという声明をだした。「私たちは中国に対して、リスクを減らすことは決して日本への譲歩ではないと言った」と、東シナ海における偶然の衝突はその後より大きな衝突につながるだろうと認識している米国当局者は語った。


 日本の有権者はリーダーに対する飽きっぽさが極めて早いが、安倍は人気を高い位置で持続させている。しかし、彼のタカ派としての最大の目的に対して納得しているわけではない。彼の最もお気に入りの政策の一つは、戦後の平和憲法の変更である。それはアメリカによって押し付けられ、日本が普通の軍隊をもつことを禁止したものである。(自衛隊は資金をたくさんかけられた防衛専用の軍事力である)「私たちは憲法を変えるべきである」と安倍は言い、一度も憲法が変更されていない珍しい民主主義国家であると。しかし、中国に対する心配はあるにせよ、ほとんどの日本人は自国の軍事力がより大きくなることを望んでいない、と世論調査で出ている。自民党の古参議院でさえ、安倍が押す日本が同盟国を守ることになる集団的自衛権に関しては疑念をもっている。「安倍は国家の安全保障や外交において、彼の右翼的志向をあらわにしている」と前自民党議院の古賀誠は言う。「それが人々を心配させるのだ」


 そのような批判が、なぜ安倍が自民党において過去にうまくいっていた二、三の国家主義者による事例と同じ道を歩んでいるのかを説明している。2012年、日本軍による強制を認めた従軍慰安婦についての謝罪を盛り込んだ河野談話を改定すべきだと安倍は要求した。今年の2月下旬には、安倍政権は河野談話が公式化される過程を再度調査すると発表した。安倍は第一次政権時にこのように発言している。「強制的に連れてこられた人々がいることを証明するものはなかったということを内閣の決定とする」と。しかし、世論はそのような動きにはっきりとは賛同しなかった。3月、安倍内閣河野談話を見直さないことを表明した。