特定秘密保護法案について改めて

12/6に特定秘密保護法案が成立して、早3週間ほど経ちます。
法案成立後のブログにも書きましたが、僕はこの法に対して引き続き警鐘を鳴らしていく必要があると思っています。
廃止や改正を目指し続けていかなくてはならない。


法成立後の各新聞社の世論調査をみると、概ね10ポイントくらい落ちていたようです。
朝日新聞では50%を割っていました。
その落差は大きかったのは事実ですが、僕は率直に言って「それでも約50%の人が支持しているのか」ということを思いました。
恐らくその50%の方に「特定秘密保護法に賛成しますか?」と聞けば、
中には「反対」という方もいるかもしれませんが、多方「賛成」と言うのではないでしょうか。
心の底から「賛成」している人もいるでしょうが、
「内閣を支持しているのに特定秘密保護法に反対するのはなんか矛盾している」という論理の結果、「賛成」している人が実は多いのではと僕は推測しています。
そして、「賛成」している方々の拠り所とするその理由は、


「秘密を守る法がない国に、情報を与えてくれる国はない。だからこの法は必要だ」


というものが多いように思えます。
僕の知る限りでは、
特定秘密保護法に賛成の意を表明し続けた産経新聞と読売新聞もその理由は、
上記のもので終始押し通していたと思います。
それがそのままこの法に賛成する一般の方々にも共有されたのだと思いますが、
逆に言えば、この理由しかこの法に賛成‘できる’理由はない、というのが真実なのではないでしょうか。
産経新聞と読売新聞ですら、表現の自由報道の自由、知る権利などについての懸念を一連の報道の中で取り上げていました。(報道機関としてそこに触れなければ自らの死を表明するようなものですが)
彼らが特定秘密保護法案に賛成し続けたのは、この法に対して賛成していたわけではなく、
単に安倍政権を支持する部分的な作業にほかならない、という見立てを僕はしています。
報道機関としてどこから見ても賛成する要素がないような法に賛成する理由として、


「秘密を守る法がない国に、情報を与えてくれる国はない。だからこの法は必要だ」


を持ち出しただけです。
理由があって賛成したのではなく、賛成するために理由を見つけたようなものです。
その理由自体、安倍内閣のこの法に対する立法理由と全く同じですし。
それが賛成する一般の方々にも共有されているわけです。
その結果、賛成者の「反対する人は他国から情報をもらえなくてもいいのか!」という言葉が、反対者に向けられます。
ここで「他国から情報をもらうことよりも、知る権利、報道の自由を守ることの方が重要だ!」と言い返してはいけません。
あえてこの質問、というか詰問に答えるなら
「当然他国からの情報は重要ですけど、知る権利、報道の自由を守ることも重要です」
が適当かと思いますが、それよりも
「設問の仕方が間違えていますよ」
と言ってやるのがよろしいかと思います。そんな設問に真正面から付き合ってはいけない。
設問自体が間違えているのです。


特定秘密保護法案の問題点は、その中身にあるわけです。
「他国から情報をもらう」ことと、代表的な理由である「知る権利、報道の自由を守る」ことを比べて、「知る権利、報道の自由を守る」ことの方が重要だから反対、ではないのです。
「他国から情報をもらう」ことの重要さは言うまでもなく誰もが重く見ているものです。
それがいらないなんていう人は、恐らく、いない。
ですので、「他国から情報をもらう」ことそのものに、「いらないのか!?」と迫ること自体が、そもそもおかしいのです。
反対する人は、「他国から情報をもらうこと」の重要性は前提としてあり、
そこではなく法の中身に対して反対しているわけです。 


・ 特定秘密の指定範囲が曖昧
・ 指定された特定秘密が公開されることのない可能性がある
報道の自由を侵害する恐れがあり、国民の知る権利を侵す可能性もある
・ 適正評価において、一般人も対象になる


などが代表的なこの法の中身の懸念される事項ですが、
これらに反対しているのです。
「他国から情報をもらう」ことに反対しているわけではありません。
しかし、この法に賛成する報道機関、人は、「他国から情報をもらうことは重要ではないのか?」ということを設問にして話を進めたがります。
ここしか、「この法に賛成する」と言って、それを聞く人から一定の納得を得る理由がないからです。
まさか


・ 特定秘密の指定範囲が曖昧
・ 指定された特定秘密が公開されることのない可能性がある
報道の自由を侵害する恐れがあり、国民の知る権利を侵す可能性もある
・ 適正評価において、一般人も対象になる


に対して賛成すると堂々と言える程の‘大物’はなかなかいないでしょう。
報道機関は当然に、一般の方でも上記の理由を掲げて「賛成」と言える肝っ玉をもった人はそうはいないと思います。


僕は、産経新聞、読売新聞にしても、安倍内閣を支持する方にしても、
この法に対して全面的に賛成しているのは、ほんのひと握りで、
他の理由で安倍内閣を支持するから、論理的矛盾をきたさない程度に賛成しているのだと考えています。
その唯一の理由が、再三挙げている
「秘密を守る法がない国に、情報を与えてくれる国はない。だからこの法は必要だ」
です。
特定秘密保護法に反対する人は、賛成する人と話す際、高い確率で上記の理由を聞くことになると思います。
それに真正面から向き合うのは得策ではありません。
「そうですよね、必要ですよね。同感です。」からはじめて、
「中身についてはどう思いますか?」と、中身そのものの話にもっていくのがよいのではないでしょうか。



僕はあくまで法の中身の瑕疵を訴え続けていきたいと思っています。