内田樹さんによる小泉氏脱原発解説

内田樹さんがツイッターで、小泉氏による脱原発についてコメントを寄せていましたので紹介します。とても興味深いです。



内田樹 11月15日
電話取材で「小泉元首相の脱原発発言をどう思うか?」アンケート。小泉さんがフィンランドに行ってそこで放射性物質処理の難しさを知って反原発に転じたというストーリーを本気にしているジャーナリストがいるとしたら、よほどナイーブな方でしょうとお答えしました。


フィンランドに行くまで放射性物質の処理の技術的困難さについて「知らなかった」政治家が日本の原子力行政のトップにいたという話を信じる人がいることが僕には信じられません。彼は「複雑な問題を単純な問題に還元する」政治技術の達人です。そのことをみんなもう忘れちゃったのかな。


かつては靖国神社公式参拝の有無に外交問題を縮減して「首相が靖国に行くかゆかないかを世界中が固唾を呑んで見守る」という特権的状況を作り出しました。その次は日本社会のすべてのシステム不調を「郵政民営化されていないからだ」というシングルイシューに還元して選挙に圧勝しました。


複雑な政治的ファクターをわかりやすいシングルイシューにとりまとめて、それを仕上げて「すべては解決した」と言い切って、ほんとうの問題から国民の目をそらせるように仕向ける技術において、小泉さんは天才です。たいしたものです。今だってすべてのメディアが手のひらで転がされている。


今の問題は「最終処理場があるのか、ないのか」だけに縮減されました。「ない」なら原発を止める、はい、おしまい。それまでの原子力行政のすべての失態と犯罪的行為についてはさらりとスルー。「処理場がある」なら原発再稼働を阻害する理由は何もない、という話になります。


安倍自民党のアイディアは、小泉反原発レバレッジにして原発問題を「ゴミ捨て場の有無」に縮減し、「捨てる場はある、だから原発再稼働に問題はない」という結論に世論を誘導することだと僕には思えます。どこにあるのかって?安倍さんが「完全にブロック」したがっているあそこですよ。

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小泉氏は脱原発について「‘最終処分場がないから’脱原発」と言っています。
原発行政がどうだとか、原発の事故が危険だからがその理由ではありません。
といことは、最終処分場があれば「原発OK」なわけです。
そこを内田さんはついています。
そして、その最終処分場を福島第一発電所の場所につくるのでは、と。
要は、小泉氏の脱原発発言は安倍内閣の援護射撃である、ということがその主旨です。
確かに、先日政府は「帰還困難区域」(年50ミリシーベルト超)への全員帰還方針を転換しましたね。実質人が入る事ができない場所なわけで、「じゃあ、そこを最終処分場にしましょう」という話は本格的に出て来ても不思議ではありません。
(石原環境大臣がフライングをして非難されていましたが)


この内田さんの見解が正しいのかどうか分かりませんし、
それは大きな問題ではありません。
僕がこの内田さんの解釈から受け取ったことは、
「物事を注意深く、注意深く見て行かなければならない」
ということです。
それを忘れないためにもここに記しておきます。