特定秘密保護法案についてあれこれ

1、 特定秘密保護法案による官僚内での変化について


11/16(土)の東京新聞の「こちら特捜部」に特定秘密保護法案についての記事が掲載されていました。先日10万部を突破した、‘原子力ムラ’に切り込んだ小説『原発ホワイトアウト』の著者・若杉洌さん(現役キャリア官僚)のインタビューです。
原発ホワイトアウト』は、言わば‘告発小説’です。福島第一原子力発電所事故以後露になった日本における原子力行政の暗部について現役官僚の視点で描いたものとして、自民党河野太郎氏などにも絶賛されています。
「国の内部にいながら、国の姿勢に対して疑問を持つ人からみた特定秘密保護法案はどういうものなのか?」というのが記事の主旨です。


残念ながら東京新聞web版では全文を読む事ができないので、書き起こしをしていただいた方のブログのURLを貼っておきます。
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11697351766.html


(以前僕が書いた『原発ホワイトアウト』について。書評ではありません笑
 http://d.hatena.ne.jp/narumasa_2929/20131002/1380692158



この記事中にとても興味深い言葉がありましたのでそれを引用します。


公務員は仲間内で日頃から盛んに情報交換をしているという。「岩から水が染み出すようにあちらこちらから情報が回ってくる」。それが、「特定秘密という名目で情報を扱う人数が限定されれば、公務員は全く情報を流さなくなるだろう。政策を練る時に内部の多様な意見を反映させられなくなる。政策の質が劣化して、結果として国家の危機を招く」。


なかなか公務員(官僚)の内部を知る機会がなく、特定秘密保護法案における彼らへの影響が言及されることは少ないと思います。
そういう意味で貴重な証言です。
若林さんは、特定秘密保護法によって公務員(官僚)どうしの情報交換が極端に少なくなる、と推測しているようです。
恐らくこの公務員(官僚)の情報交換は、省庁をまたいでなのでしょうから、
特定秘密保護法が仮に施行されれば他省庁との情報交換ができなくなり、
単一省庁の意見に染まった法案がボコボコ作られる、ということになり、
そしてそれは「政策の質の劣化」である、とうわけですね。
そればかりか、単一省庁内でも情報共有が減るでしょうから、より少人数の意見を反映させた法案が作られることも考えられます。
いわゆる究極の‘縦割り’になる恐れを感じます。
ここから
現役キャリア官僚が考える「政策の質の劣化」とは何であるか?
が分かります。
つまり、少人数、単一価値観によって作られる法案=政策こそが、質が劣化した政策である、ということですね。
特定秘密保護法案は、「政策の質の劣化」を招く巨大なエンジンになる、
という現役キャリア官僚の考えは、じっくり耳を傾けるべきものだと思います。
当然その「政策の質の劣化」は国民に影響を与えることは言うまでもありません。



ところで、東京新聞の「こちら特捜部」の充実度は目に見張るものがあります。
機会があったら是非お読みください。




2、 スパイ天国というけれど、、、


お次も東京新聞からの記事です。2010年の中国漁船衝突事件の映像を動画サイトに投稿した元海上保安官の一色正さんのインタビュー記事です。(SENGOKU39名で動画投稿)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013111602000132.html



こちらも記事中で気になった箇所を拾います。


特定秘密保護法案には今のところ賛成でも反対でもない。一つ言えることは、日本はスパイ天国といわれるような情報がダダ漏れの国家のままでいいのか。


「日本はスパイ天国」というのは度々聞きますね。
特定秘密保護法案に賛成する人は、必ずと言っていい程、この言葉を使います。
「だから必要なんだ」と。
しかしこれ、一般の人には検証のしようがないという点で、僕にはよくわからないし、この言葉を使う人はどこから情報を得ているのだろう?と思ってしまいます。報道などで使われたのを何も考えずにそのまま使っているのでしょうか。
安倍首相は国会で「過去15年で公務員による主要な情報漏洩事件を5件把握している。このような漏洩事件が発生すること自体、大変遺憾だ」と述べています。その5件のうち、2人が有罪判決(1人が懲役10月、1人は執行猶予判決)、3人が起訴猶予、不起訴処分だったようです。
この実情からして「スパイ天国」とはどうにも思えません。
「日本はスパイ天国」というからには、日本にはスパイがたくさん活動していて、実際にスパイ行為を成功させているのでしょう。
ではなぜそんなにスパイ行為がされているのに、過去15年での公務員による主要な情報漏洩事件は5件しかないのでしょうか?
その理由は僕には一つしか考えられません。
それは、スパイへの情報源が公務員ではない、からです。
これしか「日本はスパイ天国」だけれども、「過去15年での公務員による主要な情報漏洩事件は5件しかない」を満たす解答はないように思えます。
それなら、
「日本はスパイ天国」だから「公務員を厳罰に処す特定秘密保護法を制定する必要がある」
という因果関係はおかしいものになります。


一色正さんは元海上保安官だったので、「日本はスパイ天国」の内情を知っているんかもしれません。
ただ、一般人からすれば
「スパイ天国だから特定秘密法案が必要」
というのは全くもって分からないのです。



3、 みんなの党はダイジョウブか?


与党、みんなの取り込み優先 秘密保護法案の性格変わらず 修正めぐり大筋合意
http://www.asahi.com/articles/TKY201311180642.html



みんなの党が自分たちの意見が取り入れられた、と法案に賛成するそうです。
みんなの党の結党の精神は、


結党の精神は「脱官僚」「地域主権」。これを通じた国民の「生活重視」。そのためには、「政権交代」だけでは足らず、その先を見据え、「政界再編」による「真っ当な政党政治」の確立を訴える。すなわち、今の考え方の違う寄り合い所帯化した、機能しない「エセ二大政党制」を整理整頓し、政治理念や基本政策を一致させた本来の政党政治を実現する。
http://www.your-party.jp/about/


だそうです。
渡辺喜美氏もよく「脱官僚」と言っていますね。
それを党是とする方々が、特定秘密保護法案に賛成していいの?
と思うのですが、いかがでしょうか。


特定秘密保護法案は個々の案件で多々問題があるものだと思っていますが、
大根本には「官僚制度をより強固なものにする法案」という江戸時代以来の継続的な官僚の願望があるのだと僕は考えています。
その願望に満足感を与えることこそ大問題なのです。
特定秘密保護法案では、行政の長=大臣が秘密を指定することを規定しています。大臣は、民間の場合もありますが、基本政治家であり、官僚ではありません。これをもって「政治家が秘密について絶対的な権力を持てるのか?」という問いに対し、「はい」と答える人がどれほどいるでしょうか?
大臣の平均在任期間がどれほどのものか知りませんが、
総理大臣のそれを考えても、長くてもほんの数年でしょう。
下手すれば1ヶ月です。10年間あれば何人もの大臣が誕生します。
しかし、その何人もの大臣が誕生する10年間でも、官僚が変わることはありません。もちろん、役職が変わる、出向するなどの変化はあるのでしょうが、全員が変わるようなことはありません。


このような状況を想像すればすぐに分かりますが、主導権は確実に官僚が握ります。新任の大臣が「これが特定秘密です」とリストを渡さても何が何だかわかるはずもありません。なにせ新任の大臣がそれ以前に知るよしもない「特定秘密」なのですから。そうすれば当然官僚から説明を受ける必要があります。
そして、次の大臣がくればまた同じことを繰り返します。
結果、特定秘密に指定されたものの内容、意味を網羅的に知るのは、官僚のみになるわけです。
それは、特定秘密という「情報」が一ヵ所に集中して蓄積されることを意味します。「情報」の寡占化が起こるわけです。
「情報」の寡占化は、当然大きな力になります。
それは、みんなの党


結党の精神は「脱官僚」「地域主権」。これを通じた国民の「生活重視」。そのためには、「政権交代」だけでは足らず、その先を見据え、「政界再編」による「真っ当な政党政治」の確立を訴える。すなわち、今の考え方の違う寄り合い所帯化した、機能しない「エセ二大政党制」を整理整頓し、政治理念や基本政策を一致させた本来の政党政治を実現する。


という党是とは真逆の結果になるような気がしてしょうがありません。
みんなの党は、この法案を党是より優先させたのでしょうか??
不思議でしょうがない。
自民党に合流するのでしょうかね。プレゼントでしょうか。
党の支持を失うんじゃないかと、全く関係ありませんが、心配してしまいます。
ダイジョウブ??みんなの党