特定秘密保護法案Q&A

特定秘密保護法案についてQ&Aを作ってみました。
僕はこの法案に明確に反対です。
世論を盛り上げることで是非とも廃案に持って行きたいと思っています。
その一助になればという思いで作りました。
特定秘密保護法案って何??」という方にも分かるように作ったつもりですので、そのような方がいましたら是非読んでいただきたいです。
また、これを読まれた方の周囲にそのような方がいましたら、どのように使っていただいても結構ですので、読むことをお勧めしていただければ幸いです。


僕の理解している範囲のことを書いたので、間違っている、不足している、論点が違っている部分もあるかもしれません。
その際は是非コメントをいただけましたら幸いです。


よろしくお願いいたします。





Q1、特定秘密保護法案とは何ですか?


A、行政長である大臣が指定した秘密を外部に漏らした公務員(官僚、役人、自衛隊員など)は刑事罰で処罰されますよ、という法案です。それを犯した際の罰則は、10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金というとても重いものです。
安倍内閣が現在国会に提出しています。


Q2、何が秘密に指定されるのですか?


A、国の安全保障に関わる(1)軍事(2)外交(3)外国の利益を図る目的で行われる特定有害活動の防止(4)テロ活動の防止―の4分野が対象です。これらに関わるもので秘密にしておかないと国の安全保障を害するものを秘密に指定することで守ろうとしています。


Q3、国が秘密を守るのは当然だと思いますが、何か問題があるのですか?


A、確かに国には守らなければならない秘密もあるかもしれませんが、この法案では行政長である大臣(その下に当然官僚がいます)が、政権や省庁、所属する党に都合の悪いものを幅広い範囲で秘密に指定できてしまう点が最大の問題の一つです。そして何が秘密に指定されたのかが分からない点も問題です。


Q4、しかし秘密に指定する基準があるのではないですか?


A、それは行政長である大臣(及び官僚)次第です。「何でもかんでも秘密にしたい」という大臣がいれば、何でもかんでも秘密に指定される可能性は否定できません。


Q5、具体的にどのようなものが秘密に指定される可能性がありますか?


A、例えば原発関連の情報はQ2の(4)テロ活動の防止という観点から、秘密に指定される恐れがあります。事実法案を担当する森雅子内閣府特命担当相は原発の警備情報について「警察などの警備の実施状況、実施計画を公表したら、テロ(リスト)が知ってしまう」と述べ、テロ活動防止分野に関わるとして特定秘密に該当するとの認識を示しています。
TPP関連の情報も、Q2の(2)外交の観点から、秘密に指定されてもなんら不思議ではありません。
仮に原発関連の情報が秘密に指定されれば、メディアはそれを知ることができません。当然、メディアから情報を得ることが多い国民もそれを知ることができなくなります。国民が知らない状況で、原発の様々なことが決められる可能性があるわけです。
「国民の知る権利」が侵されてしまえば、政権運営の良し悪しの判断もしにくく選挙での判断にも困ります。選挙での判断は、民主主義の根幹をなすものです。それが鈍ってしまえば、民主主義は名ばかりになってしまう恐れがあります。


Q6、これまでに公務員の情報管理についての法律はなかったのですか?


A、あります。国家公務員法地方公務員法にある守秘義務です。職務上知り得た情報で、(1)公には知られていない事実で(2)実質的にも秘密として保護するに値するものを外部に漏らした場合に罰せられます。罰則は1年以下の懲役か50万円以下の罰金です。
自衛隊にもあります。自衛隊法第122条に「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者がその業務により知得した防衛秘密を漏らしたときは、5年以下の懲役に処する。防衛秘密を取り扱うことを業務としなくなつた後においても、同様とする。」とあります。また、米国から提供された防衛装備品の情報などに限った日米相互防衛援助(MDA)協定秘密保護法もあり、こちらの罰則は10以下の懲役です。


Q7、それらの罰則では不十分なのですか?


A、それが疑問です。安倍首相は国会で「過去15年で公務員による主要な情報漏洩事件を5件把握している。このような漏洩事件が発生すること自体、大変遺憾だ」と述べています。5件のうち、2人が有罪判決(1人が懲役10月、1人は執行猶予判決)、3人が起訴猶予、不起訴処分でした。
件数、量刑をみても、最近15年では重大な秘密漏えいはされていないと考える方が自然だと思います。ということは、現在の法律でも充分秘密保持はできるのではないでしょうか。


Q7、罰則は公務員だけですか?


A、いいえ。報道機関や国民も罰則をうける可能性があります。
法案の第二十一条2に「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」とあります。
著しく不当な方法で取材しなければ逮捕されないといっています。ここで問題なのが、「著しく不当な方法」とはどのようなものか、ということです。これについて鈴木内閣官房審議官は「取材対象者の人格の尊厳を著しく蹂躙し、その手段において社会観念上、是認できない場合」を「著しく不当な方法」と言っています。正直曖昧で何がダメなのか分かりません。具体的な事例も挙げられていないので、警察が「著しく不当な方法」と判断すれば逮捕することができてしまうのです。
何が「著しく不当な方法」かが分からなければ、報道機関も「これは著しい不当な方法だろうか?」と頻繁に気にしなくてはならず、萎縮してしまいます。その結果、自主規制をする人、会社もあることが想像されます。


Q8、国民が罰則を受ける可能性とはどのような場合ですか?


A、第二十四条に「第二十二条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は扇動した者は、五年以下の懲役に処する。」とあります。
指定された秘密の保持者を欺いたり、脅したりして取得することを共謀、教唆(他人をそそのかして犯罪実行の決意を起こさせること)、扇動(気持ちをあおり、ある行動を起こす ようにしむけること)したら5年以下の懲役、と言っています。これにひっかかれば逮捕の可能性も否定できません。


Q9、指定された秘密は解除されないのですか?


A、一応指定してから5年後に解除される、という規定があります。しかし、5年ごとに更新でき、計30年まで延長することが可能です。さらに30年経ってもその時の内閣が「秘密にしておく必要がある」と判断すれば秘密のままにしておけます。つまり、ずっと秘密のままにしておくことが可能なのです。
ちなみに自衛隊法で「防衛秘密」に指定された文書は、平成19(2007)年から平成23(2011年)までの5年間で約55,000件ありました。この間の廃棄は約34,300件で、防衛秘密の指定を解除されたのはたった「1件」のみです。秘密非公開が権力の基本姿勢だと思って差し支えない数字だと思います。


<参考>


特定秘密保護法案の最終案詳細(朝日デジタル)
http://digital.asahi.com/articles/TKY201310170125.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201310170125