TPPノート2


「TPP、関税ゼロなら農業打撃 GDPは増加 政府試算」
朝日新聞デジタル 2013年03月16日05時52分 
http://digital.asahi.com/articles/TKY201303150530.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201303150530


 【藤田知也】安倍政権は15日、甘利明経済再生相をTPP担当相兼務にした。甘利氏はこの日夜、日本がTPPに参加した場合、各国が輸入品にかけている「関税」がすべてなくなると、日本経済が1年間に生み出す国内総生産(GDP)が実質3・2兆円(0・66%)増えるという試算を発表した。ただ、国内の農林水産業の生産額は3兆円も減るという。


 試算は、TPPに参加しない場合と参加した場合を比べ、10年後のGDPの差額を計算した。関税を残す「例外」がどうなるかわからないため、TPPに参加する11カ国との間での「聖域なき関税撤廃」を想定して計算した。


 ただ、実際には例外をつくったり関税を段階的に引き下げたりすれば、試算通りにはならない。サービスの自由化や知的財産権のルールづくりなど、関税以外に話し合われる分野での経済効果も含まれていない。


 プラスになるのは、自動車などの輸出で2・6兆円になる。働く人の給料が増え、消費も3兆円増える。もうかった企業の投資は0・5兆円増えるという。


 ただ、安い農産物を中心に輸入が増えることでGDPは2・9兆円も減る。国内でどれだけモノやサービスが生まれたかをはかるGDPでは、海外でつくられたものを買う輸入はマイナスに評価されるためだ。


 国内の農林水産業は、コメや小麦、砂糖などの33品目で計7・1兆円ある生産額が4・1兆円に落ち込む。外国の安い農産物が入ってきて国産と置きかわる割合を計算してはじいた。


 農林水産業が打撃を受けることについて、甘利氏は「今後の交渉でこの減少額をできるだけ極小化していく。その手腕が首相以下に求められる」と述べた。


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TPP参加後の日本のGDP予測の記事を、この記事だけでなく、
度々目にします。
内容はこの記事のとおりで、増えるものもあり、減るものもあり、
結果増えることになります、といった感じです。
記事内にその後の言葉は続きませんが、
恐らくこんな感じだろうと思います。
「全体で増えるんだからよかった、よかった」
記事を読む方も同様に感じられているのかもしれない、と勝手に想像しています。



この記事に即して言えば、


>日本経済が1年間に生み出す国内総生産(GDP)が実質3・2兆円(0・66%)増える


そうです。
全体的に増えるのならいいねえ、なんて感じてしまいそうですが、
率直な感想は「それがなんぼのもんじゃい」です。
要は、富めるものは富み、富まざるものは富まないことの結果における
「全体的に増える」であって、言葉を換えれば、
貧富格差の拡大を伴う「全体的に増える」なのではないでしょうか。


「貧富格差の拡大」が良いことなのか、悪いことなのかと問われれば、
悪いことなんでしょうが、僕にはそれについての特別な知識がありません。
ただ一つ思うことは、
貧富格差は別にあってもいい、ただ貧の方がひどい状態でなければ。
ということです。
「貧しい」と言われる人たちが貧しいながらも衣食住に困らない状態なら、
お金持ちがどんだけいてもいい。
「貧しい」と言われる人たちが衣食住にすら困る状態になった時、
つまりは生命を脅かされる状態になった時、
「貧富格差の拡大」は表面化し、問題となるのだろうと思います。
TPP参加後の試算のうち、農業に関する数字のマイナスは目を覆うばかりです。
それは、生命を脅かされるほどの貧しい人を出すことになりはしないか?
それほどの数字なのではないのか?
と思ってしまいます。


【日本のGDP
2000年:474,847  2011年:507,916
単位:10億円
http://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html

【日本のサラリーマン平均年収】
2000年:461 2011年:409
単位:万円
http://nensyu-labo.com/heikin_suii.htm


だそうです。
GDPは増えているけど、サラリーマンの平均年収は減っています。
詳しいカラクリはわかりませんが、
単純に考えれば、
「‘全体的に増えること’が起こったこの12年間の動きは、
 よりお金が集まる人のところにはお金が集まり、
 そうでない人のところにはお金が集まらなかった」
ということなんだと思います。
TPP参加後に起こることもこれと似た形をとるのではないかと想像します。
つまりは、お金が集まる部門(儲かる分野)にいる人は富み、
お金が集まらない部門(儲からない分野)にいる人は貧しくなる。
試算からみると、そのお金が集まらない部門が農業である、ということになります。
「全体的に増える」背後には、農業分野の人が困窮に陥るという状態が生まれるのではないでしょうか。


僕は、富む人が生まれることよりも、困窮に陥る人が生まれないことの方が、
大事なことなのではないかと思っています。