もうすぐ終わるんじゃないでしょうか


 第二次安倍政権の特徴をあげるなら、「不祥事への対処が早いこと」ということもその一つだと思います。
麻生氏のナチス発言、安倍氏の国会での野次発言など、火の手が大きくなる前に「○○○とすれば、申し訳ございません」というエセ謝罪でもってやり過ごしてきました。
また、政治資金問題が取りざたされた小渕優子氏、「うちわ」を配った松島みどり氏は、大臣を辞任させられました。問題が大きくなる前に大臣をやめさせたわけです。
その素早さは野党、マスコミに批判をする隙を与えないための作戦だったのだと思います。
そして、それは国民に対しては、「問題処理能力が高いリーダーシップをもった首相」というイメージを植え付けることも目的にあったように思います。実際にその効果はあったものだと思います。


 しかし、それももう終焉でしょう。
ここ数日で迅速な対応がリーダーシップでも何でもないことが露見しました。安倍氏の「お友達」への対応によって、その皮がはがれてしまったのです。


 まず一人目は、下村文科大臣です。
新国立競技場の計画白紙にあたってその責任を取らされる形で文科省の役人が辞任させられた、という報道があったのは昨日です。これに対して野党は下村大臣の責任を追求しています。「事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)を所管する下村大臣の責任は重い」と。第三者委員会が発足し、8月のお盆前までに検証結果を出すそうですが、政治資金問題を抱えた小渕氏は問題の核心が明らかになる前に辞職させられました。(いまだにはっきりしていません)松島氏は本人もよくわからないまま小渕氏とともに辞職させられました。それにあてはめるなら「計画を変更すると国際公約にも違反して、日本の信用を損ねる」と平気で語っていた下村氏もこのタイミングで辞職させられても何らおかしくありませんが、安倍氏はそのことに全く触れません。この人は安倍氏の中でも最上級の「お友達」だそうです。そのことは様々なメディアで報道されており、国民の中にもある程度浸透しているものと思います。


 もう一人は磯崎首相補佐官です。
この人が大分の講演会で発した言葉は衝撃的です。
「(従来の憲法解釈との)法的安定性は関係ない。国を守るために必要な措置かどうかは気にしないといけない。政府の憲法解釈だから、時代が変われば必要に応じて変わる」
法的安定性とは、「法はみだりに変更されないということ。」という意味だそうです。(弁護士ドットコムより。http://www.bengo4.com/other/1146/1288/d_7173/
これを上記の言葉に当てはめるなら、
「法はみだりに変更されないということなんて関係ない」ということであり、
「法、憲法なんて解釈を変えちゃってもなんら問題ない」ということでしょう。
これは安保法制に関する政府の歩みそのものの言葉ですが、これを立法府の人間が言ってしまうのは驚きであり、呆れずにはいられません。
法の制定にかかわる人間が、「法なんてそのときどきで解釈変えちゃっていいんだよ」というのは何かの冗談でしょうか。こんな人間が政府の中枢にいること、そして国会議員でいることは許されるのでしょうか。謝罪したからって終わるものではありません。当然野党からは辞任要求が出ていますが、マスコミも盛んに報じていますし、それを見た民の多くももこの発言の異常さを認識しているだろうと思います。そのような状況にありながらも安倍氏は磯崎氏の解任に応じようとしません。「本人も謝っている」で済まそうとしています。繰り返しますが、謝罪なんかで帳消しになるような発言ではありません。仮にも国会議員であるならそんなこと当然のこととして理解しているでしょうけど、それでも安倍氏は火消しに躍起になってるだけです。これまでの第二次安倍政権だったら、こんな状況になったら即解任=辞職させられているでしょう。でもそれがないのは、磯崎氏が安倍氏の大事な「お友達」(第一の子分?)だからでしょう。『内閣の重要政策に関し、内閣総理大臣に進言し、及び内閣総理大臣の命を受けて、内閣総理大臣に意見を具申する(内閣法第21条2項)』を職務とする首相補佐官という首相と極めて近い場所にいる人間であることからも、磯崎氏と安倍氏の関係性は想像に難くありません。特定秘密保護法の制定にも安倍氏の手足となって働いたのが磯崎氏とのことです。


 この二つの状況をみると、僕は第一次安倍政権を思い出します。
この内閣の時に「お友達内閣」という呼び名がうまれました。そもそもその言葉は内閣を揶揄したものであり、ある種の蔑称です。そんな蔑称が送られるほど人事に関して偏りがあった、ということでしょう。自民党総裁選で自分を応援した議員を「お友達」として大臣に起用したことについての呼称でした。そして、安倍氏はその「お友達」を守ろうとして支持率を落としていきました。松岡利勝氏、赤城徳彦氏などがその象徴でしょう。
第二次安倍政権はこの記憶があって、不祥事への対応を迅速にすることを重要だと考えてきたのだと思います。それを実際実行してきて「強いリーダーシップをもつ首相」としてのイメージ戦略をそれなりに成功させてきたわけですが、ここ1、2週間ほどの下村氏、磯崎氏への対応によって、「なんだ、前と同じお友達内閣じゃないか」ということが露見してしまったわけです。さあ、大変です。化けの皮が剥がれてしまいました。下村氏と磯崎氏への安倍氏の対応により、民は記憶を呼び起こします。「何も変わってないじゃないか」。小渕氏や松島氏への対応とのギャップがその思いをより強く引き起こさせるのではないでしょうか。
支持率というのはこのようなものが落としていくのだと思います。ボディブローのように効いてくることでしょう。


安倍政権は早晩崩壊する。
下村氏、磯崎氏への安倍氏の対応をみて、そう確信しました。