安保法制記者会見について


5月14日に行われた安保法制に関する安倍氏の記者会見の内容について考えてみました。
気になった部分に個別に疑問などを差し込んでいます。(赤字部分)
11こも法案があって、正直頭がごちゃごちゃしています。
理解不足の点もありますので、誤り等ありましたらご指摘いただけますと助かります。


<全文> 
首相官邸ホームページ
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0514kaiken.html



70年前、私たち日本人は一つの誓いを立てました。もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく。そして、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この決意の下、本日、日本と世界の平和と安全を確かなものとするための平和安全法制を閣議決定いたしました。


 ⇒ 「安保関連法案を決定した14日の臨時閣議には安倍晋三首相のほか、全閣僚が出席し、10分で終わった」
東京新聞 5/15朝刊一面


 もはや一国のみで、どの国も自国の安全を守ることはできない時代であります。この2年、アルジェリア、シリア、そしてチュニジアで日本人がテロの犠牲となりました。


 ⇒ テロの犠牲とその国の体制は関係ない。例として、
「フランス大統領府は28日、チュニジアで18日に発生した博物館襲撃テロで重体となっていたフランス人女性が死亡し、フランス人の死者は計4人となったと発表した。フランス公共ラジオが伝えた。AP通信によると、全体の死者数は22人になった。
(中略)
 同テロでは日本人も3人が犠牲になった。」
産経新聞 3/29http://www.sankei.com/world/news/150329/wor1503290016-n1.html


北朝鮮の数百発もの弾道ミサイルは日本の大半を射程に入れています。そのミサイルに搭載できる核兵器の開発も深刻さを増しています。我が国に近づいてくる国籍不明の航空機に対する自衛隊機の緊急発進、いわゆるスクランブルの回数は、10年前と比べて実に7倍に増えています。これが現実です。そして、私たちはこの厳しい現実から目を背けることはできません。


 ⇒ 「自衛隊機の緊急発進(スクランブル)の回数が10年前と比べて7倍」というのは完全なまやかしだ。たしかに、2014年のスクランブル回数は943回で2004年の141回の7倍弱。しかし、それはもっとも少ない年と比較しているだけで、1980年から1990年代はじめまでは常に毎年600回から900回のスクランブルがあった。その後、2000年代に100回から300回に減少していたのが、2013年に突如、急増。24年ぶりに800 回台をマークしたのだ。これはむしろ、安倍政権になって無理矢理スクランブルを増やしただけだろう。実際、2014年も増えているのはスクランブルだけで、領空侵犯されたケースはゼロである。
LITERA 5/15http://lite-ra.com/2015/05/post-1098_2.html


 ですから、私は、近隣諸国との対話を通じた外交努力を重視しています。

⇒ 中国・習近平国家主席との会談 2014/11/10@北京(APECの会議時)
2015/4/22@バンドン(バンドン会議時)の2回


  韓国・朴槿恵大統領との会談  なし(日米韓3カ国での会談。2014/3/25)


総理就任以来、地球儀を俯瞰する視点で積極的な外交を展開してまいりました。いかなる紛争も、武力や威嚇ではなく国際法に基づいて平和的に解決すべきである。この原則を私は国際社会で繰り返し主張し、多くの国々から賛同を得てきました。外交を通じて平和を守る。今後も積極的な平和外交を展開してまいります。


 同時に、万が一への備えも怠ってはなりません。そのため、我が国の安全保障の基軸である日米同盟の強化に努めてまいりました。先般のアメリカ訪問によって日米のきずなはかつてないほどに強くなっています。日本が攻撃を受ければ、米軍は日本を防衛するために力を尽くしてくれます。そして、安保条約の義務を全うするため、日本近海で適時適切に警戒監視の任務に当たっています。


 私たちのためその任務に当たる米軍が攻撃を受けても、私たちは日本自身への攻撃がなければ何もできない、何もしない。これがこれまでの日本の立場でありました。本当にこれでよいのでしょうか。


 ⇒ 「日米安保条約は、第五条において、我が国への武力攻撃に対し日米が共同で対処することを定め、第六条において、米国に対し、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与するために我が国の施設・区域を使用することを認めています。

 このように、日米両国の義務は同一ではありませんが、全体として見れば、日米双方の義務のバランスはとられていると考えています。」
安倍氏発言 衆議院本会議 2014/3/18
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000118620140318009.htm


 日本近海において米軍が攻撃される、そういった状況では、私たちにも危険が及びかねない。人ごとではなく、まさに私たち自身の危機であります。


 ⇒ 「日本近海」以外も想定している。
集団的自衛権を巡って安倍総理大臣は、石油の輸送路である中東・ホルムズ海峡での機雷の処理に自衛隊も参加すべきだと強調しました。」
テレビ朝日 2014/5/29http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000027801.html


私たちの命や平和な暮らしが明白な危険にさらされている。そして、その危機を排除するために他に適当な手段がない。なおかつ必要最小限の範囲を超えてはならない。この3つの要件による厳格な歯止めを法律案の中にしっかりと定めました。さらに、国会の承認が必要となることは言うまでもありません。極めて限定的に集団的自衛権を行使できることといたしました。


 それでもなお、アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか。漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。その不安をお持ちの方にここではっきりと申し上げます。そのようなことは絶対にあり得ません。新たな日米合意の中にもはっきりと書き込んでいます。日本が武力を行使するのは日本国民を守るため。これは日本とアメリカの共通認識であります。


 ⇒ これは、「武力攻撃事態法改正案」(集団的自衛権)と、「重要影響事態法」「国際平和支援法」に関係してくるものであると思いますが、矛盾しているように思います。
アメリカの戦争に巻き込まれる」ことと、「日本が武力を行使する」ことは両立しうるのではないでしょうか。むしろ集団的自衛権を行使する対象、重要事態法対象国の筆頭がアメリカなので、「アメリカの戦争」に参加することは十分考えられるし、そう考えることが自然。「それはあくまで「日本が武力を行使する」ことである」という言い分を用意しているのだろうけど、それは最早言葉遊びにすぎないのは明白。武力の行使をすれば自ずと反撃をくらい戦闘になるので、結果的に「戦争に巻き込まれる」ということになるのではないでしょうか。「アメリカの」だろうがなんだろうが、「戦争」は「戦争」です。


 もし日本が危険にさらされたときには、日米同盟は完全に機能する。そのことを世界に発信することによって、抑止力は更に高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考えます。


 ですから、戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りであります。あくまで日本人の命と平和な暮らしを守るため、そのためにあらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行うのが今回の法案です。


 海外派兵が一般に許されないという従来からの原則も変わりません。自衛隊がかつての湾岸戦争イラク戦争での戦闘に参加するようなことは、今後とも決してない。そのことも明確にしておきたいと思います。


⇒ 集団的自衛権行使の条件となる「存立危機事態」
(1)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命などの権利が根底から覆される明白な危険がある
(2)国民を守るために他に適当な手段がない
(3)必要最小限度の実力行使
にあたると判断されれば、「後方支援」として参加する、という判断はあり得るのではないか?
安倍氏自身が「しない」ということが重要なのではなく、「そういうことができる法律である」ということが重要なのではないでしょうか。


 他方、海外において、自衛隊原油輸送の大動脈、ペルシャ湾の機雷掃海を皮切りに、これまで20年以上にわたり国際協力活動に従事してきました。今も灼熱のアフリカにあって、独立したばかりの南スーダンを応援しています。そこでは日本がかつて復興を支援したカンボジアが共にPKOに参加しています。


 病院を運営するカンボジア隊の隊長が現地の自衛隊員にこう語ってくれたそうであります。国連PKOでの日本の活躍は、母国カンボジアの人々の記憶に今も鮮明に残っている。この病院も本当は誰よりも日本人に使ってほしい。私たちは日本人のためならば24時間いつでも診療する用意がある。


 これまでの自衛隊の活動は間違いなく世界の平和に貢献しています。そして、大いに感謝されています。延べ5万人を超える隊員たちの献身的な努力に私は心から敬意を表したいと思います。


 そして、こうした素晴らしい実績と経験の上に、今回PKO協力法を改正し、新たに国際平和支援法を整備することといたしました。これにより、国際貢献の幅を一層広げてまいります。我が国の平和と安全に資する活動を行う、米軍を始めとする外国の軍隊を後方支援するための法改正も行います。しかし、いずれの活動においても武力の行使は決して行いません。そのことを明確に申し上げます。


 これらは、いずれも集団的自衛権とは関係のない活動であります。あくまでも紛争予防、人道復興支援、燃料や食料の補給など、我が国が得意とする分野で国際社会と手を携えてまいります。


 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態にとどまることなく、日本は積極的平和主義の旗を高く掲げ、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献していく決意であります。


 戦後日本は、平和国家としての道を真っすぐに歩んでまいりました。世界でも高く評価されている。これまでの歩みに私たちは胸を張るべきです。しかし、それは、平和、平和とただ言葉を唱えるだけで実現したものではありません。自衛隊の創設、日米安保条約の改定、国際平和協力活動への参加、時代の変化に対応して、平和への願いを行動へと移してきた先人たちの努力の結果であると、私はそう確信しています。


 行動を起こせば批判が伴います。安保条約を改定したときにも、また、PKO協力法を制定したときにも、必ずと言っていいほど、戦争に巻き込まれるといった批判が噴出しました。
 しかし、そうした批判が全く的外れなものであったことは、これまでの歴史が証明しています。私たちは、先の大戦の深い反省とともに、70年もの間、不戦の誓いをひたすらに守ってきました。そして、これからも私たち日本人の誰一人として戦争など望んでいない。そのことに疑いの余地はありません。


 ⇒ 「歴史」の範囲があまりに狭い。100年後に安保条約が要因となって戦争になる可能性はあります。仮に安保条約やPKO協力法によって日本が「戦争に巻き込まれる」ことが起きないとしても、今回の安保法制変更において同様の状況になるという蓋然性は全くない。


 私たちは、自信を持つべきです。時代の変化から目を背け、立ち止まるのはやめましょう。子供たちに平和な日本を引き継ぐため、自信を持って前に進もうではありませんか。日本と世界の平和のために、私はその先頭に立って、国民の皆様と共に新たな時代を切り拓いていく覚悟であります。
 私からは、以上であります。


 ⇒ 「自信」の問題なのでしょうか? 「これまでは、自信がないから集団的自衛権発動も、後方支援もしなかった」という認識なのか、「自信」の問題にしたほうが国民受けすると思ったのか。アメリカ議会演説に続く、「ポエム」です、これ。



<質疑応答>


今までも自衛隊の皆さんは危険な任務を担ってきているのです。まるで自衛隊員の方々が、今まで殉職した方がおられないかのような思いを持っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、自衛隊発足以来、今までにも1,800名の自衛隊員の方々が、様々な任務等で殉職をされておられます。私も総理として慰霊祭に出席をし、御遺族の皆様ともお目にかかっております。こうした殉職者が全く出ない状況を何とか実現したいと思いますし、一人でも少ないほうがいいと思いますが、災害においても危険な任務が伴うのだということは、もっと理解をしていただきたいと、このように思います。


 ⇒ 「今までも死んでいるのでこれから死んでも問題ない」と聞こえますがいかがでしょうか。


防衛省によると、自衛隊の前身である警察予備隊が発足した1950年以降、殉職者数は今年3月末現在で1874人。車両や航空機、艦船による訓練など任務中の事故が7割以上を占め、残りは過剰業務による病気などが原因のケースが目立つという。」
北海道新聞 5/16http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0134402.html



【参考】

荻上チキSession22」ポッドキャスト
2015年05月14日(木) 「安保法制関連法案が閣議決定。複雑な条文を徹底検証!」
憲法学者・木村草太さん、東京財団研究員・小原凡司さん
http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/05/20150514-1.html
(5/20まで)

iTunesにてダウンロードできます
https://itunes.apple.com/jp/podcast/2015nian05yue14ri-mu-bao-fa/id626717304?i=342164335&mt=2

すごく参考になります。