原発商売


ブラジルと原子力交渉再開へ=首脳会談で27日合意

 日本、ブラジル両政府は27日に東京で予定する安倍晋三首相とルセフ大統領の首脳会談で、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後に事実上中断していた原子力協定交渉を再開させることで合意する見通しとなった。政府関係者が19日明らかにした。


 原子力協定は原子力の平和利用を2国間で確認するもので、原発輸出の前提となる。ブラジルとは11年1月に締結交渉入りしたが、同3月11日の東日本大震災に伴う福島原発事故後は途絶えていた。両首脳は会談で交渉再開を確認し、この後に発表する共同声明に盛り込む方針だ。


 ブラジルでは現在、原発2基が稼働中。経済成長で電力需要拡大を見込んでおり、原発増設による安定供給が課題となっている。安倍政権は原発輸出を成長戦略の柱の一つと位置付けており、協定締結を急いでブラジルへの原発売り込みを図りたい考えだ。(2013/06/19-19:11)

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013061900810  時事通信

ーーーー ここまで ーーー



ブラジルに限らずですが、
現在安倍氏は活き活きと原発商売に励んでいるようです。
よく働きますね。勤勉です。


安倍氏原発商売をするにあたりの理屈は
「過酷な事故の経験と教訓を世界と共有し、原子力安全の向上に貢献していくことは日本の責務だと考える」
のようです。
(「トルコに原発輸出へ」産経新聞 2013.5.4 00:54
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130504/plc13050400560004-n1.htm


福島第一原子力発電所の事故が収束していないのに、
 他国に原発を売るとは何事だ」
という声に対するものなのでしょう。
安倍氏にとっては上記の理屈によって、
世界のためになることをしている、という意識でしょうから、
‘正しいこと’をしているわけです。
ただ、世界のために、としながら、
世界が安倍氏のやっていることを‘正しいこと’と思うかどうかはまた別問題です。
自分が‘正しい’と思ってやったことでも、
他人からすれば‘正しくない’ということはよくあることです。



ここで想像してみます。
仮に他国が現在の安倍氏が行っていることと同じことをやったら、
を想像してみます。
あまりバイアスがかからなさそうな(笑)イギリスとしましょう。


【状況】
イギリスの都市で原発事故がおきています。
その事故はまだ解決していません。
その状況で、首相のキャメロンさんが他国をまわって原発商売をしています。


それを日本から見たらどう思うかを想像してみます。
僕は「事故が解決してからやりなさいよ。そんな危ないものを他国に売る気??
   お金稼ぎを優先させるのね」
と率直に思います。
もっと大きなくくりの日本人はどう思うでしょう。当然全ての人が同じことを思うはずもありませんが、僕が感じるのと同じように感じる人も多いのではないでしょうか。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201306/2013061500165
 「原発輸出、58%が支持せず=支持は24%−時事世論調査時事通信
日本国はどう思うでしょうか。
‘国家運営の困難さ’は共有していると思われるので、
「イギリスも大変ねえ。事情はわからないけど、しょうがいとこもあるよね」
というある種の同情をもって見るように思います。
「自国内の状況よりも、お金を優先させる国なんだな」という冷静な認識とともに。
個人、国民、国ともに、「イギリスはお金稼ぎに熱心なんだな」
という認識を持つだろうと想像します。
殊に個人、国民は不信感もあわせて。


さきほど
「自分が‘正しい’と思ってやったことでも、
他人からすれば‘正しくない’ということはよくあることです。」
と書きました。
どんなに安倍氏が崇高な理念で原発商売の理屈を掲げても、
それを見る他国、他国民は、先ほど想像したイギリスの例のような感想を
日本に対して持つのではないだろうか、と僕は考えます。
表現は様々でしょう。
「日本は命よりも金を大事にする」
「日本は金稼ぎに熱心だ」
「日本は守銭奴だ」
さらに、安倍内閣の支持率が70%前後を保っているということを知れば、
安倍氏原発商売を日本人は支持している」
と見なすことは容易に想像できます。
(恐らく、この支持率云々を知らなくても、日本=日本人という印象は大きな障害もなく受け入れられてしまうものだと思いますが)
さきほど挙げた時事通信の「原発輸出、58%が支持せず=支持は24%−時事世論調査」という記事まで調べれば、そんな単純なものじゃない、という認識になるでしょうが、そこまでやる人はほんのほんの一粒くらいの割合でしょう。


原発を輸出して得られる利益は、複雑ではあるでしょうが、
「◯◯円儲かりました」と数字で出すことができます。
それに対して失うものは数字で表すことは困難だろうと思います。
それは上記のような、他国民や他国の日本に対する印象が主だからです。
(もちろん、輸出した原発が事故を起こした、などがあったら、
印象だけではすみませんが。)
数字にもできないようなあやふやなものだから無視していい、
とは決して言えないと思います。
仮に「日本は命よりも金を大事にする」という印象で日本を見る国、人がいれば、
その国、人は日本という国をそのような国として扱います。
もしかしたら、国でけでなく、日本人もそのような民族と扱うかもしれません。
「日本は命よりも金を大事にする」に対する扱いがどのようなものか
具体的にはわかりませんが、率直の思うことは、
「良い扱いは受けないだろう」ということです。
個人レベルで考えてもそんな人間僕は信用できないし、仲良くしたいと思いません。
自分が崇高な理念を掲げても、自分の他人からの扱いは他人の自分に対する印象によります。
「おれはこんなに良いことをしているのに!」と思っても、
他人が「こいつは信用ならん」と思えば、信用ならない人間として扱われることを避けることはできません。
結果生まれるのは、自己評価と他者からの評価のギャップです。
「おれのことは誰も分かってくれない」
そのことから起こる損失は、原発を売って得るお金よりも、
ずっとずっと大きなものになるような気がしてなりません。


安倍氏原発商売で日本は得るものはもちろんあることでしょう。
しかし、それ以上の損失を蒙るのではないでしょうか。
それは、これがその損失です、と明確に言い切れる類いのものではなく、
指摘できないような‘存在している現象’としての損失という厄介な類いのものでしょう。
責任も明確にできずに、ただずっとあやふやなまま存在する現象が、
ボディブローのように国、国民に損失を与え続ける未来を想像してしまいます。
明確にできないということは、対処がとても難しいということです。
安倍氏原発商売は、未来への解決するのが難しい禍根を残すのではないかと心配しています。