日銀の株式買い、歯止めなく


日銀が金融緩和の一環で行っている上場投資信託ETF)の二〇一八年の買い入れ額は計六兆五千四十億円と過去最高となった。最近の世界的な株安を受け、買い入れ額のメドとする六兆円を大きく超えた。日銀による株の買い支え姿勢が鮮明となる中、株式市場の機能の低下や将来の損失リスクも高まっている。 (岸本拓也)

 取引最終日の大納会の二十八日も日銀はETFを七百十五億円買い入れ、日経平均株価はぎりぎり二万円を保った。年間では、これまで最高だった昨年の五兆九千三十三億円を約10%上回った。夏場以降に株価下落が進み、買い入れが増加。日経平均が二二〇〇円近く下がった十月は、月間買い入れ額が過去最大の八千七百億円となった。今月も七千九百六十一億円と過去四番目だった。

 日銀は白川方明(まさあき)前総裁時代の一〇年十二月からETF買い入れを開始。当時はリーマン・ショック後で日経平均が一万円を下回り、投資家不安を和らげる狙いだった。一三年三月に就任した黒田東彦(はるひこ)総裁は買い入れ枠を拡大。株価が上昇基調になっても枠を順次増やし、現在は「年間約六兆円」を目安に掲げる。

 今年七月には「市場状況に応じて上下に変動しうる」と政策を修正。六兆円超えを容認したことで買い入れ拡大につながった。

 中央銀行による株買いは、主要国はどこも採用していない異例の策。いまや日銀のETF保有残高は二十三兆円を超え、時価では日本市場の約4%に上る。日銀が実質的大株主となる企業も増えることで、企業価値が株価へ適切に反映されず、市場にゆがみを生じさせる懸念がある。

 ETFは、売却しない限り日銀が持ち続ける。将来、株価が急落した場合、日銀は含み損で債務超過のリスクを抱える。前日銀審議委員で野村総研木内登英(たかひで)氏は「簿価(取得額)から三割余り株価が下がれば、日銀の自己資本はほぼ無くなる。常に爆弾を抱えているようなもの。買い入れを減らす方向に正常化すべきだ」と指摘する。

ETF(上場投資信託)> 証券取引所に上場する投資信託で、個別企業の株と同じように売買ができる。複数の大企業の株式を組み合わせ、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価に連動する商品が代表的。日銀は、信託銀行を通じてTOPIX連動型を中心に買い入れている。買い入れ基準は非公表だが、市場では、午前中に株価が0・5%前後下がると、午後に日銀が買うと言われている。

東京新聞   http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122990070321.html

このように株価は「維持」されているのですね。
自分の任期“だけ”株価を、見た目にも良い20,000円代に維持することのみ考えた = その後のことは関係ないという政策にしか私には思えません。
そんな政権です。
ここに年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資も追加されます。
2014年10月31日から構成割合の目標値を国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%に変更されました。
それまでは、国内債券が51.91%、外国債券は10.76%、日本株式が16.79%、外国株式が15.54%でした。(2014年6月末)
株式比率が、32.33% ⇒ 50%に増えました。
それだけ国民の年金積立金を株式に投資できるようになったわけです。
その後国会で「運用益が出た、出ない」の議論がされていましたが、率直な疑問として私が思うところでは、「その株、売れるの?」ということです。

日銀もGPIFも株式投資比率が増えたことで経済、企業への影響が大きくなっていることは間違いありません。
引用記事にも

「いまや日銀のETF保有残高は二十三兆円を超え、時価では日本市場の約4%に上る。日銀が実質的大株主となる企業も増えることで、企業価値が株価へ適切に反映されず、市場にゆがみを生じさせる懸念がある。」

とあります。

(GPIFは)市場規模509兆円のうち、6%弱の日本株保有している。三井住友、みずほ、三菱UFJの3大メガバンクやホンダなど、少なくとも日本企業の121社の筆頭株主であり、トヨタ自動車の発行済み株式数の5.5%を保有する第二位の大株主である。TOPIX 500のうち、約99%の495社で10位以内の大株主である。

また、日本の中央銀行である日本銀行は、2016年末までに日経平均株価225社のうち、55社で筆頭株主となっており、日本の株式市場における公的機関の存在感が増している。

wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B4%E9%87%91%E7%A9%8D%E7%AB%8B%E9%87%91%E7%AE%A1%E7%90%86%E9%81%8B%E7%94%A8%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%B3%95%E4%BA%BA


これだけ影響力をもった状況で仮に保有株を売ったらそのことによる株価への影響もまた大きいのではないでしょうか?
大黒柱をひっこぬけるのか?
それを考えると、「その株、売れるの?」と思ってしまいます。
「運用益が出た、出ない」なんていう話が馬鹿らしく聞こえてしまう理由です。
それもこれも「株価20,000円超えを維持する」ことにご執心な現政権の“施策”によります。


「わーい、株価が20,000円超えてるんだから好景気だ」なんて思ってたらとんだ“不景気”がやってきます。